斉藤社長
信越化学工業は、人工知能(AI)の普及がけん引する成長市場の需要を取り込み、“正真正銘のAI銘柄”へ変貌を狙う。シリコンウエハーやフォトレジスト、フォトマスクブランクスといった製品群に加え、塩化ビニル樹脂でもデータセンター向けの配管や電線ケーブルで商機があるとみて、「全方位で取り組み、顧客との取引を伸ばしていく」(斉藤恭彦社長)。塩ビでは関連設備の次なる投資も見据えつつ、足元で課題となっている収益性の改善に向け、まずは価格改定に集中する。
27日に2025年4~12月期決算を発表した。営業利益は4980億円と前年同期比15%の減少となっているものの、各利益段階で通期業績予想(昨年7月の公表以来据え置き)に対する進捗率は前年同期と同水準である80%前後で推移している。
主力の電子材料セグメントは、売上高が同6%増の7503億円だった。品目構成の要因から営業利益は微減となった。10~12月のシリコンウエハーの販売は、前年同期と今期7~9月をそれぞれ上回る水準で推移したという。
今後は活発なデータセンター投資などにともなう需要拡大に期待する。同社全体ですでに「AI関連製品の売上高比率は15%」(斉藤社長)に上るが、ウエハーについてはAI向けの割合はまだ小さく、伸びしろが大きい状況。顧客がウエハー確保への意識を強めている手応えがあるという。ただし、短期的な引き合いは、顧客における在庫調整の進展に左右されそうだ。
フォトレジストも拡大基調にある。今年4月には群馬県伊勢崎市で新拠点が稼働する予定。
ハードディスクドライブなどに使われる希土類磁石は、原料のレアアースの安定調達が懸念事項。斉藤社長は、「直接の調達先のその先まで踏み込んで、リスク軽減に取り組んでいる」と話す。工場が高稼働となっているなか、在庫を慎重に確保しつつ、調達先の多角化やレアアース使用量低減といった対策を急ぐ。
塩ビを中心とする生活環境基盤材料事業の4~12月期の営業利益は1463億円と前年同期から35%減益だった。塩ビ市況は、中国からのデフレ輸出を主因として、「どのメーカーにとっても耐え難い」水準に落ち込んだ。寒波による寒波による各社生産への影響や、他社工場の閉鎖の発表、中国政府による輸出増値税(付加価値税)還付の取りやめ方針といった複数の要因も契機となり、すでに底は脱したもよう。
4月に向け、1月から段階的に値上げを進める。塩ビ原料の増強の可能性については、「計画の細部を詰めており、近々発表できるようにしたい」と語った。ただし、足元の喫緊の課題は値上げ。過去の設備投資も「採算性の改善があったから実施できた」と述べ、まずは価格改定の取り組みを優先する考えを示した。