<2050持続可能な未来へ アンモニア/6(その2)>

    【1面からつづく】

     アンモニアの大量合成のために普及しているハーバー・ボッシュ法は100年前に開発された製造技術。大量一極集中生産に適している半面、高温・高圧、大規模なプラントが必要で環境負荷が高いことが課題となっている。東京工業大学発のつばめBHBはエレクトライド触媒を用いて低温・低圧、小型の製造技術開発に努め、初受注にも至っている。海外を視野に事業展開を目指すと語る中村公治執行役員に聞いた。

    ■…国内ではアンモニア製造の撤退検討の動きがあります。他方、クリーンアンモニアは燃料用途として大規模な供給網の整備も計画されています。

     「化石燃料由来のアンモニアは温室効果ガス(GHG)の面からも競争力を欠き、国内でもさらなる縮小が予想される。一方、カーボンニュートラルの流れで燃料向けに多くが振り向けられることになり、また、人口増を受け肥料用需要も拡大するなか、窒素源であるアンモニアは世界で奪い合いになる可能性がある」

     <まずは肥料向け>

    ■…つばめBHBのオンサイト生産システムは輸送・貯蔵コストが不要で、アンモニア調達価格の低減につながり、食糧や環境課題解決に貢献する技術として提案しています。

     「天然ガス価格の高騰を受け足下では欧州のアンモニア設備の7割が停止しているという。需給の歪みが生じ始め、中長期的な調達リスクも勘案すると、小型でいいから自ら設備を持ちたいという需要も増えている。われわれは顧客が危険なく、容易に、相対的に安価にアンモニアを作り出せるような技術確立に努めている。先述の通り、燃料向けが肥料用途を奪う可能性があり、まずは地産地消で取り組みやすい肥料向けのニーズを獲得していく」

     <小型は受注ずみ>

    ■…19年12月から川崎で年産20トンのパイロット設備の運転を続け、昨年度には小型装置の基本設計も受注しました。

     「想定する事業モデルの1つは年500トンから3000トン、あるいは5000トンといった小型合成装置を提供する『モジュールシステム』の提案で、製品として設備を販売しようというものだ。もう1つは、1万トン以上の規模で、オーダーメイド式で設計パッケージを提供する『EPC販売』。小型のオンサイト設備はすでに受注ずみで、24年度後半から25年度にもクリーン水素由来のアンモニア製造が開始される予定だ。EPC販売は海外中心に狙い、東南アジア諸国連合(ASEAN)で受注活動を進めている」

    ■…ラオスではエネルギー鉱山省と小型アンモニア装置を用いたグリーンアンモニアやグリーン肥料製造の調査事業で協力覚書を締結しました。

     「ラオスは内陸国で肥料を海外から頼っているが、水力発電によるグリーン電力が供給可能だ。われわれの事業モデルとも合致するもので、早期に5000トン規模の生産設備を導入し、そこから肥料に誘導したい」

    ■…グリーンイノベーション基金では新規の触媒開発にも努めています。

     「大量生産可能な非貴金属の触媒開発プロジェクトで、30年までに、合成プロセス全体の設備費用を増やすことなく、運転コストを15%以上低減しようというもの。発電用の燃料用途に主眼を置いたものだが、当然我々のモジュールにも使用できる。リスクをヘッジし、よりサステナブルな企業になるための挑戦だ」

    (聞き手=但田洋平)
いいね

  • ランキング(持続可能社会)