• プラスミド製造拠点
      プラスミド製造拠点
     <拠点ルポ>

     沖縄から遺伝子・細胞治療の発展に貢献する-。バイオ医薬品などのウイルス安全性試験などを手がけるメディリッジ(東京都台東区、眞鍋幸子社長)が沖縄県うるま市に遺伝子治療薬の原材料となるプラスミドDNA製造拠点を開設する。GMP(医薬品の製造・品質管理基準)準拠で製造して治験薬向けに提供し、研究と商業化の間に横たわる「死の谷」の克服をサポートする。

     那覇空港から車で約45分。沖縄県中部うるま市州崎地区に、沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センターや沖縄ライフサイエンス研究センターといったセンターが立地し、バイオ関連企業が集積する地域がある。そのうちの1つである沖縄バイオ産業振興センター内に、メディリッジがプラスミドの治験薬GMP製造拠点を構築している。

     2014年に再生医療等安全性確保法(安確法)が施行されるなど、再生医療の実用化に向けた指針などが整備され、遺伝子治療薬などの基礎研究も進む。臨床試験へとステージが引き上がる案件も増え治験薬のGMP製造に対する需要が増加する一方、現状国内に十分な生産・供給施設が整っていない。市場ニーズに対応するため、メディリッジはかねて一部機能の拠点を構えていた沖縄で、沖縄バイオ産業振興センターに移転・拡張して施設を新設した。近く本格稼働する。

     同センター3階で、今夏着工しGMP準拠でプラスミドを製造する施設を完成させた。培養、精製、充填と工程ごとで適切に管理された区画が設けられている。研究開発ルームも備えている。従来、講堂だった空間を改装し独自に設計した施設で、将来の増強などにも柔軟に対応できる体制になっている。

    • 培養工程区画
      培養工程区画
     2009年2月に設立したメディリッジは、バイオ医薬品や遺伝子治療、再生医療の分野で、ウイルス等安全性試験などの医薬品開発業務受託(CRO)、プラスミド作製などの製造受託(CMO)、さらにコンサルティングなどの事業を展開している。プラスミドの製造受託は、非ウイルスベクター法の1つである「piggyBac(ピギーバック)トランスポゾン法」を用いた自家キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)療法向けなどで実績をあげている。品質試験や安定性試験まで製造から試験まで一貫したサービスを提供している。

     プラスミドはCAR-T細胞のほか、メッセンジャーRNAやウイルス、ゲノム編集などでも求められる。豊富な実績と蓄積している知見やノウハウを武器に、治験薬用GMP製造の新拠点を稼働させて供給力を高め、幅広い案件を請け負っていく。

     すでにさまざまな研究案件で取り組みが進んでいる。眞鍋社長は、「それらの芽が出て、治療へと実用化していくことに対する期待感が非常に高い。事業化の前に横たわる『死の谷』越えに貢献したい」と語る。

     3月に、帝人、台湾バイオ企業TFBSバイオサイエンスと、遺伝子導入をともなう再生医療等製品の製造・開発に用いるウイルスベクターとプラスミドの供給で業務提携した。外部とのコラボレーションでも沖縄の新拠点を軸に積極展開していく。

    (岩﨑淳一)
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