• 視察会参加者に投資を呼びかける投資省のシャハーン氏
      視察会参加者に投資を呼びかける投資省のシャハーン氏
     <インドネシア、カリマンタン島化学振興/上>

     世界第4位の人口に基づく内需主導型の経済を強みに、海外企業の投資を呼び込んでいるインドネシア。近年は電気自動車や車載電池といった分野の誘致に力を入れ、非日系勢の進出が目立つ。化学分野に限ると、日本企業の投資案件は数えるほどで、“脇役”といった印象だ。そうしたなか、インドネシア投資省(BKPM)が廃棄物発電とクロールアルカリの一体型事業を掲げ、海外企業に投資を呼びかけている。候補地は、新首都開発で話題を集めるカリマンタン島。化学工業日報は、同省が主催した日系企業向け視察会に参加し、誘致活動の現状を取材した。

     「私が病気にかかったとする。日本製のいい薬が欲しいが、それがなかなか届かない。先に届くのは中国や韓国の薬だ」。9月後半に行われた視察会の初日、ジャカルタ市内のホテルの一室に集まった日系企業約20社を前に、同省東南アジア・豪州・ニュージーランド・太平洋投資促進局長のサリブア・シャハーン氏は日本企業からの投資が増えない現状をこう憂いた。同省では現在、事業化を進めたい産業を具体的に示した81案件で外資誘致を行っている。今回の視察会はそのうちの「東カリマンタン州での化学産業の振興に向けた廃棄物発電インフラ開発プロジェクト」について、関心を持つ日系企業に政府の意図や候補地周辺の様子を知ってもらうためのものだ。

     同州はインドネシア最大の島であるカリマンタン島の東側に位置し、新首都が建設されているヌサンタラがあることで近年脚光を浴びている。国際空港と貿易港のあるバリクパパン市は人口約80万人を抱え、同島のインドネシア領内では最大都市。今回のプロジェクトは、同市やその周辺から排出される廃棄物の利用を最大の目的とし、廃棄物発電設備とそこから電力供給を受ける電解設備をセットで誘致することで廃棄物処理と産業振興を同時に進める青写真を描いている。

     バリクパパンに誘致する廃棄物発電設備は、16メガワットの発電能力が想定されている。必要な廃棄物は日量1000トンで、これは同市や州都であるサマリンダの排出量を合わせれば到達可能という。

     その発電設備から生み出される電力を化学プラントへ供給する。具体的には、電力多消費分野であるクロールアルカリ事業を誘致し、需要先とする。計画上の電解工場の生産規模は、カ性ソーダが年間約3万7000トン、塩素サイドは塩酸として同4万8000トンと比較的小規模。原料の工業塩は、バリクパパンの沿岸部でくみ上げた海水から精製する構想だ。

     投資省の依頼で事業調査を行った国営検査会社スコフィンドの担当者によると、誘致するクロアリ事業は、売り上げ全体の8割をカ性ソーダに依存するビジネスモデルを想定している。経済成長による工業化に加え、ニッケルやアルミナといった資源の精錬、レーヨン製造などの拡大で、カ性ソーダの需要は増えている。カ性ソーダの内需は年率11%、塩酸は同5%伸びるというのが調査を通じた見立てだ。

     一方で、国内で電解事業を展開する企業はAGC傘下のアサヒマス・ケミカルと地場のスルフィンドの2社しかいないのが現状。とくにカ性ソーダは需要と供給のギャップを大量の輸入品で埋めていることから、東カリマンタン州でのクロアリ事業にも勝算があるというわけだ。

     同国の化学産業は、国内が一大消費地にもかかわらずそれほど大きくなく、工場はジャワ島西部に集中している。東カリマンタン州に電解設備ができれば、同州での汎用化学品生産に先鞭を付けることになる。スコフィンドの担当者は、廃棄物発電から得られる電力の需要先として、「当初は医薬、バイオケミカル、電気電子分野も候補に挙がっていた」と明かす。化学産業はこうした分野と同列に並べられており、同国では現在でも産業の高度化のために一定の役割を期待されているといえそうだ。
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