<第2期始動 トランプ政策どう読む/3 自動車サプライチェーン>

     米国時間20日に始動したトランプ新政権は、電気自動車(EV)を軸とした“100年に一度の大変革”を加速するかもしれない。選挙戦から主張していた“EVの義務化”撤廃により政策転換が実施されるものの、バッテリーEV(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHV)需要への影響は限定的となり、供給面ではこれまでの増強投資により車載電池は完全内製化を見込む。米国内で進展するリチウムプロジェクトなどにともなう電池原料の中国依存の低下により、想定していたEVチェーンの構築が進む。また、テスラCEOのイーロン・マスク氏の政権入りは、自動運転技術といった次世代モビリティの普及進展を後押しするだろう。4年先のトランプ後も視野に入れ、商機を逃さない体制整備が成長のカギを握る。

     <広い収益領域網羅が不可欠>

     ここ数年、絶えず話題になっていた自動車産業の大変革。BEVの市場展開から見えてきたのは、今後の自動車のサプライチェーンは起点を鉱物(レアメタル)を含むバッテリー原材料、終点をモビリティーサービスまで収益領域を網羅しなければならないことだ。その実現にはレアメタルなどの確保やモビリティーサービスに必須なソフトウエアの開発への莫大な投資を迅速に実施できる規模の力が必須となる。日産とホンダの経営統合の狙いはそこであり、今後も自動車メーカーの合従連衡は進むとみられる。

     <CVの販売は中長期で伸長>

     日本貿易振興機構(JETRO)によると、2024年の米国の新車販売台数は、好調の目安となる1600万台を突破したもようだ。バイデン前政権の優遇策も影響し、BEV、PHV、燃料電池車のクリーンカー(CV)の需要も伸長、24年は前年比9・4%増の162万台(推定)となり、新車販売の1割ほどに達した。JETROの大原典子リサーチマネージャーは「各メーカーはEVに向け多額な投資を実施している。新政権でのEV政策は大きく変わる見込みであるが、EV化に向けた中長期的な上昇トレンドは変わらないのではないか」と分析する。

     日本でも同様の見方が強く、電池サプライチェーン協議会の森島龍太業務執行理事は「今後も脱炭素化が自動車開発の最重要テーマなのは変わらない」と話す。

     <産業支援策など変更は限定的か>

     トランプ新政権が指摘する“EVの義務化”とは、バイデン前政権が目標とした30年までに全新車販売台数の50%をCVにすることと、その達成に向けた環境規制と購入および産業支援策を指すとみられる。詳細は、今後の政策を注視する必要があるが、EVの購入と産業支援策であるインフレ削減法(IRA)およびインフラ投資雇用法(IIJA)は、両法とも法改正には議会の賛同を得なければならないことから、新政権での変更は限定的という予想が多い。

     米国の車載バッテリーの輸入比率は現状約3割で、その大半を中国品が占める。米国では、日本や韓国企業による電池分野での増強投資により、前政権の生産能力目標は達成できたもようで、30年には800ギガワット時という米国需要を内製品で賄える見通しだ。

    • 日系メーカーは北米でのEV発売を計画する(ces2025で公開されたホンダ0シリーズ)
      日系メーカーは北米でのEV発売を計画する(ces2025で公開されたホンダ0シリーズ)
     <中国への原材料依存が低下>

     中国品依存度が高いバッテリー原材料も同様に進む。昨年IRAに適用したFEOC規則では、懸念される外国(現時点では中国、イラン、ロシア、北朝鮮)企業が製造する駆動用バッテリーを搭載するCVを購入支援対象から除外した。今後、電解質塩、電解質バインダー、黒鉛といった原材料への適用が予想されることから、日系メーカーなどでは、現地に材料を起点としたバッテリーチェーンの構築を進める。トヨタは豊田通商、ホンダは阪和興業と協業を進める。トヨタが、ノースカロライナに建設中のバッテリー生産会社には、豊田通商も出資しており、豊田通商が事業化した南米産のリチウムのほか、米国とのFTA締結国からの原材料の調達体制を構築する。

     モビリティーサービスについても、閣僚となったイーロン・マスク氏を中心にトランプ新政権により加速するとみられる。一部の州では自動運転技術が実用化されているが、テスラでは完全自動運転の「ロボタクシー」と「ロボバン」を発表した。日系メーカーも米国でEVを投入していく計画で、ホンダは、26年から次世代EV0(ゼロ)シリーズの発売を開始するとともに、ソニーとの共同出資会社であるソニー・ホンダモビリティでは、エンターテインメント性を高めた「AFEELA(アフィーラ)」ブランドのEVの受注を開始した。(おわり)

    (阿桑健太郎、小谷賢吾、但田洋平が担当しました)
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