有機過酸化物や高機能ポリマーを研究開発する衣浦工場にある研究所
<注目製品解剖>
日油の自動車ケミカルが好調だ。とくに金属部品用防錆剤や、ヘッドランプ向け防曇剤の販売が伸長している。防錆剤は製造拠点の川崎事業所(川崎市)などを候補に設備投資が視野に入り、世界トップシェアの防曇剤は愛知事業所(愛知県武豊町)で2024年に増強ずみと需要対応の体制作りが進む。樹脂の重合開始剤や樹脂添加剤も含めて自動車生産台数と紐付いた事業特性だが、技術と品質で差別化しながら堅実に展開している。
沢村孝司社長は防錆剤について「コロナ禍で落ちた需要が戻ってきた」と晴れやかな表情で話す。日本を含むアジアや欧米で事業展開する製品だが、とくに足元で需要がおう盛なのは中国の電気自動車(EV)向けだ。
もともと防錆剤は各種金属部品の腐食を防ぐコーティングとして必須の製品。このため、燃費改善を目的とする軽量化のために樹脂部品を多く採用するEVの普及は金属部品の減少につながり、防錆剤としては「逆風」になる懸念があったという。実際にそうした面もあるが、足元の中国市場では政府による補助金制度が消費者の購買を後押しし、「全体のパイが増えたことで当社製品の需要も伸びている」状況だ。
中国では低コストの競合技術も存在するが、信頼性を重視するユーザーに日油の製品が選ばれている。日本、欧米における実績も評価されているようだ。
沢村社長
「EV需要がいつまで続くか不透明なところはあるが、市場動向の推移によっては増強投資をする可能性もある」。タイミングとしては26年度以降の次期中期経営計画期間中に投資案件の一つとして浮上することになりそうだ。増強は現在の製造拠点である川崎事業所を軸に検討する。
ポリカーボネート製ランプの内側にコーティングする防曇剤も牽引役の一つ。光源が熱を発しないLEDになると、ランプ内に侵入した湿気が蒸発せずに液滴化してしまう。これによって光が散乱して曇るという新しく生まれた技術課題を解決するものだ。
当初は高級車に用途が限定されていたが、LED化の普及とともに防曇ニーズも高まっている。24年には需要増に対応するため愛知事業所の衣浦工場で3億円を投じて能力増を図っている。
自動車に使われる樹脂向け製品としては他にも、「重合開始剤としての有機過酸化物から、樹脂改質剤としての異音防止剤、耐擦傷性改良剤などもある」。樹脂部品の需要増と、内燃機関にはなかった新しい課題が生じているEVの市場動向も、自動車ケミカルの今後に大きく影響する。
こうしたなかで強みとなるのは、やはり技術力。防錆剤は亜鉛フレークの形状や分散の制御、薄膜化などをコア技術とし、環境や作業従事者に配慮した水系タイプもラインアップしている。防曇剤は湿気が液滴化するのを防ぐため、難易度が高いとされる塗膜の親水性の維持について、界面活性技術などを駆使して実現している。生み出した付加価値がユーザーに選ばれることにつながり、競争力を持ちながら事業を継続できる秘訣となっている。