• 多彩な車種を展開するマルチ・スズキ。現行車種のほとんどがインド向けに開発されたものだ
      多彩な車種を展開するマルチ・スズキ。現行車種のほとんどがインド向けに開発されたものだ
     <進化するインド自動車供給網/上>

     成長が続くインドの自動車産業で、開発の現地化を進める機運が高まっている。シェア5割奪還を狙うスズキは、コストダウンとより迅速に現地ニーズに対応する体制を目指し、4輪子会社マルチ・スズキ・インディアの研究開発部門で部品の現地調達を推進。ティア1企業にも現地での開発機能拡充を依頼し、日本勢でこれに呼応する動きも出始めている。スズキは2030年までに生産能力を現状比1・7倍の年間400万台に増やす計画で、輸入部品の削減が競争力に直結する。同社の呼びかけによりサプライチェーン上で現地開発の動きが広がれば、機能性素材などの現地生産を求める声が高まる可能性がある。

     マルチ・スズキによると、ティア1から仕入れる部品の現地調達率は取引額ベースですでに95%と高い。首都デリーに近いグルガオンとマネサール、西部グジャラート州の各工場の隣接地に大型部品を手がけるティア1企業などが製造拠点を置く「サプライヤーパーク」を整備するなど、サプライチェーンを構築してきた。一方で、日系、非日系問わずティア1が自社製品に使用する輸入部品まで考慮すると、現調率は80%程度まで下がる。

     マルチ・スズキでは、社内の研究開発部門がこうした輸入部品の代替に取り組んでいる。車種開発は基本的に日本で行われるため、細かな部品には現調化の余地がある。同社のサプライチェーン担当者は、「コネクターやベアリングなどは輸入していたりするので、そこまで踏み込んで現調化しようと日本側の承認を得て変えていく」構えだ。ただ、現在は現調化できる部品を車種開発後に後追いで洗い出し、コスト削減を試みている状態。迅速化のために、新車種のどの部品から現調化するか、前もって意向を共有することにしている。

     同様の試みを、サプライチェーンで相対するティア1にも広げたい考えだ。新車種に変わるタイミングで少しでも多くの部品を生産開始時から現調化できるよう、開発段階で現調部品を使うよう働きかけている。

     さらに一歩踏み込んだ要望として、開発の現地化も依頼している。インドでも近年はSUV(多目的スポーツ車)が売れ筋車種となるなど、インドユーザーの好みやトレンドが徐々に変化し、市場からくみ取ったニーズへの対応や開発の迅速性が一層重要性を増している。マルチ・スズキでは現調化や開発活動で競合をリードするため、ティア1へ向け、車両適合や各種評価作業、インド特有のニーズへの対応といった開発活動をインド国内で行うよう呼びかけている。開発のスピードアップだけでなく、コスト削減効果も見込める。

     こうした動きに呼応したのが、インドでエアバッグや内外装部品を手がける豊田合成だ。23年11月に豊田合成テクニカルセンターインディア(ハリヤナ州マネサール)を移転・拡張し、エアバッグを実際に膨らませる展開試験機を導入するなど評価設備を揃えた。これまで工場や日本で行ってきた試作用の縫製も同センター内でできる。顧客立ち会いの下で試作品を評価し、問題があればその場で縫製し直して再評価可能だ。

     豊田合成ウノミンダインディアの林幹根社長は「これからかなりの数の車種が立ち上がっていくなかで、(評価のために)毎回日本に持って行って結果を持ち帰ってとなると間に合わないので、現地でR&Dを強化すると決めた」と話す。スタッフ数も順次増やしており、28年末には現在の2倍近い66人とする計画だ。

     スズキが旗振り役となる開発機能の現地化の動きは、今後も日本勢に広がりそうだ。林社長は「現地でのR&Dをどうすべきか検討していて、当社を訪問させてほしいと依頼してくる日系企業は多い」と明かす。

     インドでの開発活動は欧米勢が先行している。独ボッシュはバンガロールに研究開発センターを持ち、22年にはハイデラバードにソフトウエアの技術センターも開設した。独コンチネンタルも研究開発拠点を有している。日本勢は開発スピードやコスト競争力で差を付けられ兼ねない状況にある。
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