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  • インド塩、日本シェア拡大狙う 品質・低コスト訴求
  • 2025年7月29日
    • 広大な天日塩田。日本向けは品質と供給安定性で非常に高い水準が求められる
      広大な天日塩田。日本向けは品質と供給安定性で非常に高い水準が求められる
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     ソーダ工業用原料塩の供給構造が揺らぐか注目される。インドのランカーズ・インターナショナル製塩を扱うシンガポール化学商社のパシフィック・コモディティーズ・エクスチェンジ(PCE)が、年600万トン程度の需要で安定する日本市場に切り込みを図ることで、メキシコ塩、オーストラリア塩、インド塩の間でシェア移動が生じる可能性がある。2026年度の価格改定交渉を控えるなか、十分な価格競争力を背景に、品質と供給の安定性を高めてきたインド塩の選択肢が増える。また、いずれも勢力を伸ばすことに意欲的だ。

     日本はソーダ工業の原料となる塩およそ年600万トンをすべて輸入している。メキシコ製塩が200万トン強、オーストラリア製が300万トン強、インド製が100万トン強といった内訳とみられ、日系総合商社数社が各国の塩田に出資したり、長期に渡る取り組み実績を築いたりして日本へ供給している。00年代初頭にインド塩の台頭が始まり、10年前後までにこうした比率がおおよそ固定化した。需要量としても、カ性ソーダが内需の変動を輸出で補い総需要が安定するのに連動して、600万トン強の国内ソーダ工業用塩市場が安定している。

     アジアでも屈指の高品質が要求されるのも日本市場を特徴づける。不純物が少なく、塩化ナトリウムの含有量が多い「1級塩」と呼ばれる水準を保つ厳格な管理が必要となり、ランカーズ塩にとっても課題にもなるが、PCEは韓国大手化学メーカー向け供給実績を獲得し、日本市場に参入できる他国塩並みの品質評価を得たことを強調する。自社塩田と中小規模のOEM委託先を扱うなか、均質化のための自社ラボを整備。乾期中に収穫を終えて雨季の出荷は在庫で対応する体制で積み出し港近隣に洗浄設備を投資するなど、この7~8年で品質管理水準を高めてきた。

     先行して立ち位置を得た既存のインド塩も、韓国で高シェアを持ち、商社が10年かけて日本向けに品質を高めてきた。複数の塩田と連携するうち、最初期の1990年代から取り組む塩田は生産能力こそ数十万トンの中小規模だが、その1級塩には固定客も多いという。提携塩田をインド各地に点在させることで事業継続性(BCP)を確保し、過去にフォースマジュール(不可抗力による供給不能)例はない。幅広い産業を支え、水処理剤など社会インフラにも不可欠なソーダ工業製品は安定供給が絶対条件。出発原料である工業用塩も、その重責を負うため、インド塩も品質管理能力を高める過程で、市場参入条件と言える安定供給も追求してきた。

     他国塩と並ぶ品質・物流の安定性を得て、両インド塩はいずれも、強みとするコスト競争力をシェア移動につなげたい考え。PCEはドル建てFOB価格ベースでの競争優位性を示して「1ケタ%台のシェアを安定的に供給したい」とする。既存インド塩も品質面を高水準で安定させることで、存在感を着実に高めていく方針を持つ。

     26年度の工業用塩価格改定で、価格競争力がどの程度の威力を持つかは、電解コストの削減方針と品質・物流の安定性や複数購買を含むBCPをユーザーがどのように天秤をかけるかで決まる。国内に中継貯塩基地を持つメキシコ塩、日本から最も近く中型船による輸送で効率的な物流体制を敷くオーストラリア塩とも、細心の注意を払って供給安定性を固く守っており、ユーザーも厚い信頼を寄せる。

     ただ、工業用塩コストを見直す削減強化がユーザーに働いてもおかしくない事業環境だ。電解総コストのうち工業用塩の占める割合は1割未満とされ、過半が電気代を始めとするユーティリティコストが占めるが、脱炭素対応の投資コストと合わせてこれらが引き続きかさむ。塩化ビニル樹脂を筆頭に塩素評価が悪化し、電解設備全体の収益性が悪化する現状は、コストを削ろうとする十分な理由になると捉えるユーザーもいる。
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