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  • 成熟する包材 インキ大手の戦略、インドは群雄割拠
  • 2025年10月1日
    • アジアの軟包材製造はグラビアインキが主流
      アジアの軟包材製造はグラビアインキが主流
     <成熟する包材市場 インキ大手の戦略/上>

     新興国の印刷インキ市場で、将来的な成熟化に備える必要性が高まっている。軟包材向けのリキッドインキでは成長市場としてインドへの期待が膨らむが、すでに欧米勢を含むグローバル大手が乱立。過当競争との指摘も出始めた。一方の東南アジアは生産地、消費地の両面からプレゼンスが高まった結果、米中対立の影響が現れやすい市場となった。直線的な成長見通しが以前よりも描きにくい今、インキ大手は高効率生産への移行や品種の絞り込みに動く。

     印刷インキの世界市場では、DIC・artience・サカタインクスの日本企業3社がグローバル5指にランクインする特徴がある。アジア中心のartienceを除いてバランスよくグローバル展開するが、いずれも東南アジアや南アジアを成長の主軸と見込んでいる。

     <シェア横並び>

     このうちインドではグラビアインキなどの増強投資がさらに活発化する見込みだが、熱視線を注ぐのは日系に限らない。フリント、フーバー、シーグヴェルクなど欧米大手がいずれも製造拠点を構え、現地シェアは“群雄割拠”の状況だ。サカタインクスの上野吉昭社長によれば「当社とフーバーがシェア15%強でトップ」だが、各社が11~12%で並び立つとの見方もある。この状況で後発のartienceが10%近傍まで追い上げるなど、競争が激しい。

     直近で注目を集めるのはフーバーの動向。元来オフセットインキなど情報メディア系に強いメーカーで、2023年にドイツ本国での大型リストラの方針を打ち出した。その後25年4月にインド系と米系のファンドが形成したコンソーシアムに買収され、9月に欧州市場での方針を改めて具体化。ドイツにおける高効率生産に向けた新規投資とポーランドへのリキッドインキの生産集約などを掲げたばかりだが、むしろ注視すべきはインドへの注力姿勢だ。

     フーバーは05年にローカル大手のマイクロインクスを買収した経緯からインド展開の規模が大きく、インキ原料を含む特殊化学品事業の本拠地もインドに置く。DICの曽田正道常務執行役員は「改革当初は特殊化学品に注力するとみられたが、実際にはリキッドインキの拡大に力を入れ始めた」と話す。多極分散したシェア状況がすぐに変わることはないとみつつも競合激化に備え、自社が23年に稼働させた新鋭工場「Optima」を生かした競争力で勝ち抜きを図る。

     artienceはグジャラート工場を念頭にグラビアインキ増強を早める方針を打ち出したが、これと対照的に慎重姿勢をとるのがサカタインクスだ。上野氏は「パノリ工場の増強を視野に入れるが、グラビアインキが伸び続けるとは限らない。むしろ水性フレキソへの版式変更が起こる可能性を秘めた有望市場」とみて、今後の変化点を見定める。

     <新聞向けも縮小>

     軟包材に先立ち、成熟化に転じたのは情報メディア市場。先進国で構造改革の対象となる一方、長らくインドでは新聞インキを中心に年率4%ほどの成長が続いたが、いよいよ24年頃から若干のシュリンクが始まった。すでに同国でもスマホが浸透し、デジタル化が波及。他エリアの市場動向からみても一時的な踊り場とは考えにくく、生産最適化はもはや先進国や新興国を問わない課題となった。
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