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  • 住化、石化収益を技術供与軸に POなど世界展開
  • 2024年6月7日
    • 千葉工場(千葉県市原市)のPOプラント
      千葉工場(千葉県市原市)のPOプラント
     住友化学は、石油化学事業を技術ライセンス中心の収益構造に転換する。独自のクメン法プロピレンオキサイド(PO)などの製造技術で、世界大手エンジニアリング会社などと協業しライセンスを世界展開する。開発中のケミカルリサイクル(CR)やバイオ原料化の製法でも供与を広げる。供与とその後の触媒の販売で、長期的に営業利益数百億円を安定的に稼ぐことを目指す。

     石化事業は日本、シンガポール、サウジアラビアの3極でナフサ分解炉から誘導品まで展開するが、中国などの新増設にともなう供給過剰などを背景に苦境が続く。石化をメインとするエッセンシャルケミカルズのコア営業損益は2022年度342億円の赤字、23年度907億円の赤字だった。立て直しに向け各拠点で構造改革を断行する一方、技術ライセンスの拡大をテコに安定した収益を確保する事業体の構築を狙う。

     技術ライセンス供与ビジネスは、契約締結で一時的なライセンス収入を得るほか、その後も触媒を供給することで継続的に収益を得られる。大型プラントを設けて製品を供給する従来の石化ビジネスから脱却し、技術ライセンスを軸とする事業展開でボラティリティ(変動率)の低減につなげる。

     すでに技術ライセンスの強化策を実行している。独自PO技術で大手エンジニアリング会社の米ケロッグ・ブラウン・アンド・ルート(KBR)と独占的なライセンスパートナーの協業契約を結んだ。同技術は韓国S-オイルやタイのPTTグローバルケミカル(PTTGC)などへの供与で実績がある。今後はグローバルにネットワークを持つKBRのマーケティング力とエンジニアリング力を活用し、アジアにとどまらず成長する世界市場に技術を売り込む。

     さらに成長ドライバーとして環境負荷低減に貢献する新技術のライセンス供与も積極展開する。開発中のアクリル樹脂(PMMA)ケミカルリサイクルの独自技術で、大手技術ライセンサーの米ルーマス・テクノロジーと協業契約を結んだ。PMMAを熱分解し、原料メチルメタクリレート(MMA)モノマーに高効率で再生するもので、住友化学が商業化に向け技術を磨き上げるとともに、ルーマスのライセンサーのノウハウを生かし供与技術に仕上げて、潜在需要を掘り起こす。

     ルーマスとは、住友化学の低密度ポリエチレン/エチレンビニルアセテート(LDPE/EVA)製造技術についてもライセンスに関する協業契約を結んだ。

     住友化学は、CRのほか、エタノールからプロピレンの製造、二酸化炭素(CO2)を原料とするメタノール製造技術などの開発を進めている。環境負荷低減に対する取り組みが強まるなか、事業化を加速するとともに、ライセンス供与で世界各地に展開し社会実装に貢献していく計画。

     既存の石化製品の製造技術と、環境負荷低減技術の両面で技術ライセンスを広げる方針。大型設備投資で事業拡大する従来型から、技術ライセンス主体のアセットライト(資産圧縮)のソリューション型にシフトし、収益安定性の実現を目指す。
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