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  • 三井化学、成長戦略練り直し 重点3領域で再検討
  • 2024年6月14日
    • 橋本修社長
      橋本修社長
     三井化学は成長戦略を見直す。2030年度までの長期計画で、収益の第1の柱に掲げたライフ&ヘルスケアは拡大の進展が想定より遅れる。モビリティ、ICTと合わせた成長3領域で戦略を再検討し、投入する経営資源の配分の修正も視野に入れる。再構築を進める石油化学は300億円のコア営業利益を安定して稼ぐ事業体にする。ただ、成長投資は手綱を緩めず、収益拡大を図りながら政策保有株の見直しなどで資本効率を高め、10%超をターゲットとする自己資本利益率(ROE)は目標を引き上げる。

     橋本修社長が化学工業日報社の単独取材で、30年度に向けた長期経営計画において、とくにライフ&ヘルスケアで飛躍的な拡大を目指す成長戦略の見直しに着手していると述べた。「利益拡大が計画から遅れるライフ&ヘルスケアの目標を引き下げ、想定を上回るペースで成長するモビリティに重点を置くか、(成長3領域で)どのようなバランスで投資するかなどを議論している」。11月に予定する次の経営概況説明会で修正した目標値や戦略を公表する。

     外部要因に左右されにくいライフ&ヘルスケアの高成長を掲げ、25年度コア営業利益650億円、30年度900億円を計画するが24年度360億円にとどまる見通し。かねてM&A(合併・買収)を駆使した非連続な成長で高い目標値を実現する考えだが「大型投資の実行が妥当か」慎重に見極める。

     既存事業は、主力のメガネレンズ材などのビジョンケアと農業化学品が順調に事業を拡大する一方、第3の柱と期待する歯科材が計画通りに育っていない。成長軌道に乗せるため、経営基盤が手薄な米国で強化策を実行する方針。製品拡充やマーケティング機能の拡充を狙い「M&Aや提携の機会を探っている」。

     一方、モビリティは、自動車部材と太陽電池封止材などが好調で利益拡大の速度が想定を上回る。30年までにモビリティを第1の収益源に据え、積極投資する可能性があるが、橋本社長は「自動車の内部構造の変化、各国の規制動向などを注視しながら検討している」と語った。

     自動車関連は、ポリプロピレン(PP)コンパウンドや特殊ポリオレフィンなどで需要を捉えているが、グローバル競争も激化する。差別化を図る新製品を投入し優位性の向上を目指す。また、中・長期的な成長の実現に向け、自動車だけでなく「ドローンなど別の移動体、新輸送システムなど幅広く商機を探る」。

     半導体材料などのICTは、半導体回路の原版(フォトマスク)を保護する薄膜材料「ペリクル」、製造工程用保護テープ「イクロス」など中核品の拡大に加え、今後は「後工程に事業領域を広げ、プラットホームを構築していく」ことで成長を加速する。新光電気工業への出資参画を足がかりに、外部資源を活用し「さらなる技術獲得などを検討している」。

     石化を中心とするベーシック&グリーンマテリアルズ(B&GM)は再構築第2幕を着手し、東西のナフサ分解炉やポリオレフィンの他社連携は「24年度中にグランドデザインを示す」と改めて強調した。現状、「再構築を実行することでコア営業利益200億円程度まで達成は見込めるが、B&GM事業で稼いだキャッシュでグリーン化など再投資に回すことが理想で、その実現に300億円レベルを目指す」とし、他社連携による効果創出などでギャップを埋めていく考え。

     当初計画では、コア営業利益で25年度2000億円、30年度2500億円を設定していた。ただ、23年度は962億円で、24年度予想も1250億円にとどまる。25年度目標は遅れる見込みで「2000億円の達成時期を精査している」。

     他方、B&GMのアセットライト(資産圧縮)化や政策保有株の売却などで資産効率は高める。ROEは23年度6・1%にとどまったが、過去10年平均は10%を上回る。30年に「10%以上のどのレベルに目標設置するか検討している」と明かした。
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