• 髙橋社長
      髙橋社長
     レゾナック・ホールディングスは半導体材料事業に経営資源を集中すべく、大胆な事業ポートフォリオの組み替えに舵を切る。石化事業は一定の資本関係を維持しつつ、税制優遇も得ながら分離・独立させる手法を採用。2026年の新会社上場を目指す。採算の厳しいハードディスク(HD)事業も連結孫会社に承継させる会社分割に踏み切る。「コングロマリット・ディスカウントに陥らないためにも投資家目線での対応が不可欠」(髙橋秀仁社長)との認識で、30年に本体の売上高に占める半導体・電子材料事業比率を足下の26%から45%超に引き上げる考え。

     「地道な原燃料転換も重要だが、株主、投資家目線での企業価値最大化に向けて本当に正しい方策や手順、プロセスはなにか」。国内の他の石化企業の競争力強化策にかねて疑問を唱えてきた髙橋社長が、今回選択した「奇策」がパーシャル・スピンオフの手法だった。

     <税制優遇も活用>

     23年度の税制改正で創設された特例措置で、従来はスピンオフの実施法人に持分の一部を残す場合、課税の繰延べが認められなかったが、一定の適格要件を満たせば、スピンオフ主体が20%未満の持ち分を保持することを可能とする。見なし配当課税や資産移転譲渡損益も対象外になるなど株主へのメリットが大きい。

     レゾナックHDは石化事業を新会社として分割し、26年をめどに東京証券取引所に上場させる。株式の20%未満を継続保有し、残りを既存株主に現物配当として分配する。対象は大分コンビナートにおける基礎化学品事業で、アンモニアなどを手がける川崎事業所は対象外とし、「水素発電の利用などクリーンなケミカルパークという成長の画を描く。半導体材料向けの有機モノマー技術もある」として引き続き本体で抱えていく。

     <“三方一両得”に>

     髙橋社長は14日の会見で、パーシャル・スピンオフが「株主」「従業員」「社会的責任」のすべてに配慮した「三方一両得の考え方だ」と説き、「今後も石化部門の売却は想定しておらず、独り立ちが狙い。われわれが一定資本を持ち続けることで新会社はレゾナックの名前も使用でき、従業員も安心できる。カーボンニュートラルに資する研究開発の面でも責任を持つ」と強調した。

     また、スピンオフは「あくまでオプションの1つであり、再編を否定するものでも止めるものでもない」とし、石化再編の議論のなかで他社との共同事業体(JV)形成の選択肢に切り替える可能性も十分あると言及。「残りの8割が他の化学メーカーの持ち分になることを売却と呼ぶならその可能性も排除しない」。

     <HDは孫会社に>

     苦戦するHD事業は連結孫会社のレゾナックHD山形(山形県東根市)に事業継承する。7月にレゾナック・ハードディスクに社名変更し、専業子会社として分社化する。ボラティリティが大きく、意思決定の迅速化が狙い。HD事業は23年度に台湾拠点を閉鎖し、全体生産能力の3分の1を削減ずみ。構造改革で稼働率が上がり、24年度は固定費約90億円の改善を見込むなか、分社化でさらなる事業成長を目指す。

     半導体材料のポートフォリオをさらに厚くするのは生成AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、データセンターや自動運転など半導体市場の成長が大きいとみるためだ。研究開発はすでに短中期テーマの5割以上を半導体に集中させており、28年度に7割まで高める。

     24年度業績は半導体市況の回復で営業利益280億円(23年度は38億円の赤字)と黒字回復を見込む。半導体材料メーカーの色を濃くするレゾナックが反転攻勢に打って出る。
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