• 米国のコンパウンド工場
      米国のコンパウンド工場
     AGCはフッ素樹脂コンパウンド事業の拡大に向け、グローバル一体運営の強化に乗り出した。昨年「コンパウンド事業グループ」を立ち上げ、米国や日本など5拠点間で開発製造やマーケティングの機能を共有。電気自動車(EV)やオイル・ガス開発、半導体といった成長領域の需要拡大を取り込む。米国では昨年押出機を増設し、日本でも2024年末の完了をめどに増産投資を実施。新拠点設置も検討中だ。

     フッ素樹脂コンパウンドの用途は航空宇宙・車載電線の被覆から燃料用ホース、ガス開発装置用バルブ・シーリング、化学プラント用パッキン、半導体製造装置、各種摺動部品にいたるまで幅広く、世界的な需要拡大が見込まれる。AGCはフッ素樹脂エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)やパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)といった溶融性フッ素樹脂に加え、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのコンパウンド製造販売を手がける。

    • 阪本グループリーダー部長
      阪本グループリーダー部長
     事業グループ立ち上げの狙いは「国・地域ごとに異なる技術的な要請に迅速かつ柔軟に対応していくこと」(阪本由喜グループリーダー 部長)。フッ素樹脂コンパウンドのグローバル本部である米国、また製造拠点やテクニカルサービス(TC)拠点がある日本、欧州(英国)、中国、東南アジア(シンガポール)の各地域拠点間で情報共有を深め、一体経営を強化する。

     本部機能を持つ米国法人AGCケミカルズ・アメリカ(AGCCA)は、東部ペンシルベニア州でTCセンターとコンパウンド工場を運営。同社は1999年に旧ICI(英国)のフッ素樹脂事業を買収し発足した。コンパウンディング能力は日本の千葉工場の2倍以上とグループ最大。昨年、エネルギーや自動車関連顧客の要請に応え増産投資を実施した。

     コンパウンドのベース樹脂はAGC品に加え他社品も取り扱い、顧客も欧米、中国などグローバルに広がる。開発・製造に関する知見がグループで最も蓄積されており、事業グループ発足に当たり社員トレーニングの知見を他拠点に提供するなどしている。

     今後は大陸間の製品融通もより柔軟に行いたい考えで、日米間では相互補完できるグレードについて融通を始めた。またフッ素樹脂重合工場がある英国拠点と協力し、欧州での新規用途・顧客の開発を積極化させている。

     AGCは需要拡大に備え、フッ素樹脂コンパウンド増産に向けた検討も始めた。欧州のほか東アジア、東南アジア諸国が立地先候補になる。

     フッ素樹脂を含む同社パフォーマンスケミカルズ事業の売上高は昨年、1669億円と化学品セグメント全体の3割だった。一方、営業利益ベースでは同5割を占める。フッ素樹脂は付加価値が高く、その拡大は事業経営安定に寄与する。中国でもETFEやPFAの商業生産を目指す企業があるが参入障壁は高い。

     AGCは昨年、樹脂を含むフッ素製品で総額350億円の増産投資を決めた。完了は25年の予定。30年にはパフォーマンスケミカルズ事業の売上高を現状比約2倍の3000億円に引き上げる目標を掲げており、フッ素樹脂は達成に向け重要な役割を担う。
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