• 連載 基盤材料
  • 中国VAT還付廃止で反発 継続的な価格上昇が焦点
  • 2026年3月3日
     <フォーカス>

     <塩ビ、アジア市況展望/上>

     中国で輸出塩ビへの増値税(VAT)還付が3月末で廃止されることが決まり、塩化ビニル樹脂のアジア市況が継続的な価格上昇に転じるか、市場関係者が注視している。貿易市場に出回っている大量の中国品は一部、価格競争力が削がれるが、内需低迷が深刻な中国が強い輸出圧力を抱える状況は大きく変わらず、4月以降の同国品の輸出、動向が今後の市況を左右する要素の一つとなる。同時に、域内で最も輸入需要が多いインドの調達意欲も、6月ごろから同国が雨季の不需要期に差し掛かるなかで重要だ。

     原材料の国内仕入れに要したVAT13%が輸出時に還付される制度が廃止となる。1月8日に発表された後、塩ビ市況は反転上昇し、早速その影響を見せた。アジア塩ビ市況の目安となる台湾大手FPCは輸出価格を2月積み、3月積みの2カ月間で合計80ドル値上げした。物流混乱による一時的な需給ひっ迫を除き、およそ3年ぶりの大幅な値上げに成功したかたち。日系メーカーも、インド向け製品の価格をこの2カ月間で100ドル前後高い770ドル程度で販売しているとみられる。

     塩ビ輸出は、長く低収益に苦しんできた。FPCのインド向け値付けは、700ドル台前半が常態化。ほぼ採算ラインを維持したが、それでも深刻な内需低迷を背景に600ドルを下回る安値で大量に投げ売りする中国勢の売値とかけ離れ、売り残しを頻発していた。2025年11月にはインド当局が輸入品に対するアンチダンピング課税を見送ったことで最安640ドルへ、さらなる値下げを余儀なくされていた。

     日系勢のインド向けも、全量販売こそ堅持しているが、低迷する市況から利益が増えない構造が続く。信越化学工業で塩ビ事業を担う生活環境基盤材料事業の第3四半期(25年4~12月)累計営業利益は前年同期比35%減の1463億円。AGCは化学品セグメントの25年12月期営業利益が530億円(6・7%減)と減益だった要因の一つを、東南アジアで過半のシェアを持つ塩ビの価格下落とした。塩ビを含むエッセンシャルケミカルズ領域が営業利益に占める構成比も24年度の4割から25年度は2割に下がった。東ソーでもクロル・アルカリ事業の25年度(26年3月期)営業利益見通しを22億円(24年度比76・8%減)の大幅減と予想しており、厳しい事業環境に直面している。

     それだけに、VAT還付廃止の発表を市況低迷の底打ちにつなげる機運が盛り上がる。「廉価販売していた中国勢自身が採算是正を目的に、価格転嫁した」(メーカー)ことが、FPCが値上げに成功した要因と指摘する日系メーカーもいる。

     足元では需要家側の環境も整った。アジア域内で最大の輸入需要を持つインドは需要の最盛期にあり、これまでに買い溜めた中国品の在庫消化も順調に進んだ。上昇したとは言え、いまだ700ドル台前半の価格は、十分に安く、4月以降、中国品の価格競争力が一定程度は確実に失われるなかで「買い急ぎが見られる」(メーカー、商社)。

     では今後、継続的に値上げできるか。塩ビ輸出の収益改善を占う重要な要素となる。
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