<2050持続可能な未来へ アンモニア/1(その2)>

    【1面からつづく】

     燃料アンモニアは2020年末に策定されたグリーン成長戦略で重点分野の1つに掲げられ、21年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」でも30年の電源構成で水素・アンモニアを1%とすることが盛り込まれた。エネルギーの「ゲームチェンジャー」として注目されるアンモニアのバリューチェーン構築を目指す業界団体、クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)の村木茂会長(東京ガスアドバイザー)に現状認識を聞いた。

    ■…直接燃焼可能で燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない点などが評価され、アンモニアが燃料として注目されています。ただ、環境、安全面での課題も指摘されます。

     「燃やした際に温暖化係数の高い窒素酸化物(NOx)や亜酸化窒素(N2O)を生成すると言われるが、石炭火力への混焼ではN2Oはほとんど生じない。ガスタービンで発生するリスクについても技術開発で抑制可能との認識で、最終的に脱硝工程でも除去できるため、排ガスの問題は概ねクリアできたと考えている。貯蔵した際に漏れるのが最も危険だが、ウォーターカーテンなどで防護すれば問題ない。そもそも、発電所や化学工場など一定程度管理された区域での利用を想定しており、技術的、コスト的ハードルは決して高くない」

    ■…導入に向けた技術開発の進捗について。

     「最初に商用化されるのは石炭火力の混焼で、20~60%の混焼バーナーの開発は完了し、専焼バーナーの開発も進む。JERAは来年度1年かけて碧南火力(100万キロワット)での20%の大規模実証を実施した後、27年度に混焼を開始するだろう。ガスタービンの直接燃焼の技術開発も順調だ。50キロワットや300キロワットでの専焼のめどが立ち、IHIは2メガワット級で25年の実用化を目指す。大型ガスタービンも25年以降に40メガワット級で専焼発電、450メガワット級で30%混焼発電の実用化が見込まれる」

    ■…クリーンアンモニアの国内導入スケジュールについて。

     「JERAの碧南での混焼利用を皮切りに27年頃にまずは50万~100万トンが導入され、30年には石炭火力中心に300万~500万トンの受給を想定する。国のグリーン成長戦略では50年に3000万トンとの絵を描かれたが、仮に原子力比率が下がれば、アンモニアや水素の導入量がもっと増える可能性も十分ある」

    ■…導入初期は製造過程で生じるCO2を回収したブルー・アンモニアが中心になりそうです。

     「コスト面からも、再エネ由来水素を用いたグリーン・アンモニアの普及にはもう少し時間がかかるだろう。ただ、足下の油価やガス価格を考えると、変動が少なく、安定的な価格形成が予想されるグリーンについては今後の電解装置のコストダウンなどと相まって、相対的に競争力を増していくことも予想される」

    ■…カーボンニュートラルポートの形成が進むなか、小名浜と徳山下松を燃料アンモニアハブとして想定しています。

     「とくに、周南地区は出光興産が液化石油ガス(LPG)タンクの一部をアンモニアに転用する計画を掲げており、輸入も比較的早く始まるのではないか。中長期的に懸念するのは2次輸送だ。日本の内航船は船員が日本人に限られ、高齢化も進む。新たなロジスティクスを構築するには法改正も含めた検討が必要となろう」

    ■…クリーンアンモニアの定義案(中間まとめ)を策定しました。

     「製造時のCO2排出量を天然ガス水蒸気改質(SMR)と比べて60%以上削減した場合をクリーンアンモニアと定義した。今後、経済産業省などと協議しながら最終案をまとめていく。日本は、ともすれば韓国と対立しがちだが、エネルギーを輸入依存する両国の需要をまとめられれば、それなりの規模感で、市場でのプレゼンスも高まる。適切な情報交換や企業単位の連携も積極的に進めていくべきではないか」(聞き手=加納修、但田洋平)
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