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  • DIC、顔料の中国展開、転換点に 南通の汎用品生産停止など
  • 2023年12月13日
    • C&Eのパール顔料。無機系光輝材の組み込みが中国向け提案にも大きな変化点をもたらす
      C&Eのパール顔料。無機系光輝材の組み込みが中国向け提案にも大きな変化点をもたらす
     DICの顔料事業が中国で大きな曲がり角を迎えている。環境規制の強化にともない、現地展開の軸足は「生産」から「アプリケーション提案」へとシフト。まもなく南通拠点における汎用品生産を停止する一方、このほど上海技術ラボを移転増強するなど仕上げの時期に入った。製品面でも高級顔料を中心とするポートフォリオへの転換が進み、ハイエンド化が進む現地ニーズに対応。自動車の高意匠塗装向けの開発をスピードアップするほか、化粧品・農業向けといったスペシャリティ用途でも中国特有のニーズをすくい上げていく。

     中国では2010年代終盤、染料・顔料などのメーカーが集積する長江デルタで事故が相次いだほか、環境規制の強化が進んだ。DICのカラーマテリアル製品本部を統括する秋山義成常務執行役員は「もはや外資メーカーが顔料生産できる環境にはない」と強調する。すでに欧米系の顔料メーカーがほとんど生産撤退したほか、現地メーカーも長江デルタからの移転を検討している。

     DICは19年ごろ、一部の高級顔料を生産していた連雲港迪愛生色料(江蘇省)の工場を閉鎖。長江保護法を根拠として隣接エリアへの移転を決めた南通迪愛生色料(南通DIC、江蘇省)でも、汎用品であるアゾ系の黄色・赤色顔料の生産を24年度いっぱいで停止する計画だ。

     移転後の生産品目はグラビアインキが中心となり、オフセットインキについては中国全土向けのマザー拠点として再出発する予定だ。これらの再編を受け、顔料事業の自前拠点は染料・顔料中間体を製造する宿遷林通新材料(江蘇省)にほぼ限られることとなる。

     生産地としての利点が薄れる一方、秋山氏は「消費市場としての魅力は増大している」と話す。これに対応するため、今年10月には新拠点を開設。21年に買収完了した旧BASF顔料事業(現C&E)が保有していた技術ラボを拡張し、同月に上海市内での移転を完了させた。ここに南通DICにあった技術サービス機能も統合。「カラーマテリアルズ・テクニカルセンター」としてリスタートを切り、工場に付属した在来型の技術センターとは異なる“前線基地”としての役割で運用していく。

     新センターではディスプレイのカラーフィルター用顔料を除く製品を取り扱い、「C&E系製品を含むハイエンドアプリケーションの提案」(秋山氏)に注力する。中国では要求水準の高度化と“ローカル特性”の高まりが顕著で、フォーミュレーションを組んだうえでの提案型営業への転換が必要とされているという。

     とりわけ自動車市場では電気自動車を相次いで投入するローカル自動車メーカーの開発サイクルが短く、これまで欧米寄りだった素材仕様も中国独自なものへ変化。化粧品や農業分野の種子着色なども現地特有のニーズが台頭している。
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