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  • 三菱ケミG、筑本カラー前面に 人事で大なた振るう
  • 2024年2月13日
    • 筑本次期社長
      筑本次期社長
     三菱ケミカルグループが、4月1日に始動する筑本新体制の発足にあわせ、業務執行に携わる執行役を大胆に入れ替える役員人事を発表した。ジョンマーク・ギルソン社長の右腕として財務戦略を取り仕切った中平優子最高財務責任者(CFO)や江口幸治代表執行役など、社長含む13人の執行役のうち8人が3月末をもって退任する。他方、メチルメタクリレート(MMA)の知見に富む黒川聡氏を社外から呼び戻すなど「筑本カラー」を前面に打ち出したのが特徴。過去3年間で生じた社内の混乱や軋轢を修復し、成長軌道を取り戻せるかに注目が集まる。

     今回発表したのは、社長(ファーストレイヤー)に次ぐ、セカンドレイヤーに当たる人事で、執行役とその下の執行役員。筑本学次期社長が指名委員会の下で決定した。

     退任する執行役はMMAやエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)などを所管した佐々木等氏や、シャープなどを経て入社し、最高イノベーション責任者(CIO)なども務めた最高技術責任者(CTO)のラリー・マイクスナー氏。最高人事責任者の平岡朋代氏や飯田仁氏(監査所管)や羽深成樹氏(渉外所管)も退任する。

     新任の執行役は「筑本色」が鮮明だ。筑本氏からベーシックマテリアルズ所管のバトンを引き継ぎ、ギルソン社長が果たせなかった石化再編に改めて挑むのが下平靖雄氏。テレフタル酸事業などに長く携わり、筑本氏とともに化学業界に顔の利く人物だ。

     収益力が低迷し、立て直しが急務のMMAを所管する黒川聡氏は「出戻り」での就任となる。もともと三菱レイヨンの出身で、21年からMMAのアジア本部長も務めてきた。ギルソン体制下の昨年3月に会社を後にしていたが、今回は筑本氏がその手腕を買って呼び戻した格好。4月1日付で再入社し、事業再構築を託される。

     CTOに就く葛城俊哉氏は三菱化学フーズの取締役戦略企画室長などを務め、シュガーエステルなどの事業に携わった。中平氏の後を受けてCFOに就くのは現在欧州のファイナンス責任者の木田稔氏で、執行役員に就任する。

     指名委員会にも名を連ね、法務や内部統制、総務・人事などを所管する藤原謙氏やファーマの辻村明広氏は留任となった。

     ギルソン社長が経営の基軸に据えてきたスペシャリティマテリアルズを所管し、ともに組織改編や製品ポートフォリオ改革を担ってきたランディ・クイーン氏も留任する。また、同部門は4月1日付で、(1)フィルムやコンパウンドなど(2)半導体などエレクトロニクス関連(3)炭素繊維やコンポジット、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ-の3グループに分け、それぞれを所管する執行役員を配置する。

     三菱ケミカルグループの足元の業績は石化やスペシャリティマテリアルズの不振を産業ガスが支える格好で、次代の成長の柱が見いだせていないのが実情だ。筑本新体制の船出は、ギルソン社長在籍時に進まなかった石化再編の完遂や、事業ポートフォリオ改革を経ての新たな収益源の育成といった荒波が待ち構えている。
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