化学企業が多いマプタプット地区に建つi2Pセンター。本格的な設備で試作品生産まで対応する
歴史的にこれまで、日本や欧米の企業と提携することで新事業を生み出すことが多かったタイ企業だが、近年は、自前の技術や知見をベースに顧客からの要望を取り入れた製品開発に力を入れている。素材大手サイアムセメントグループ(SCG)で化学事業を担うSCGケミカルズ(SCGC)もそうした企業の一つだ。グループ会社が集まる東部ラヨン県に置くポリマー製品の開発拠点「i2Pセンター」を中心に、高付加価値製品の拡大を目指している。
「i2P」は「アイデアを製品へ」という意味を込めて名付けた施設名。顧客の持つ新製品・新技術への発想を具現化するための場だ。SCGCによると、年間200を超える企業や機関の訪問を受けており、1年間に上市までいたる新製品の数は20件を超える。足元では100件以上の開発パイプラインを抱えているという。
開発で重視するのは、顧客への迅速で柔軟な対応。材料、製品や機械の設計、加工などの専門スタッフはi2P全体で600人あまり。このうち博士号を持つ研究スタッフは100人以上おり、充実した陣容で顧客が持つアイデアの受け皿となっている。
手厚いのは人材だけではない。i2P内の作業スペースには射出成形機、フィルム成形機、パイプ製造設備など、樹脂製品の成形機械がずらりと並ぶ。いずれも樹脂成形企業が商業生産に使用する設備と同等のものだ。顧客にとっては試作品の生産まで任せることができる。
先進技術を利用した開発の効率化も進む。同社でチーフ・オペレーション・オフィサー(COO)とチーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)を兼務するスラチャ・ウドムサック氏は「製品設計とプロセス開発においてデジタル技術を全面的に活用している」と話す。樹脂製品の設計には3Dスキャンを使用。備え付けの3Dプリンターで素早く造形し、強度や樹脂使用量などをシミュレーションする。
i2Pではさらに、ファインケミカル分野に当たる触媒の研究開発も行っている。専門チームが開発した「EL CAT」は、高密度ポリエチレンの大規模生産に適した触媒。これまでに中国、インド、インドネシアなどで5件の採用実績を持つ。このうち1件は、SCGCがベトナム南部に新設した石化拠点だ。積み重ねてきた触媒への知見は、耐摩耗性に優れ、鉱業などのスラリー輸送用に新開発したPE管「VHAR」にも活用されている。