<松崎修 常務執行役員>
旭化成は2025年度、事業持株会社の研究・開発(R&D)組織を再編し、コーポレートR&Dを担う研究・開発本部と、マテリアル事業のR&Dを担うマテリアル新事業開発センターとに分割した。研究・開発本部は、先端技術研究所、基盤技術研究所、イノベーション戦略総部の3体制へと移行し、領域を横断するテーマや利益貢献までの距離感があるテーマ、新事業につながる独創性の高いテーマなどを中心に推進することとなった。
研究・開発本部やマテリアル新事業開発センターのリソースは、新たに始動した中期経営計画で定めた重点成長分野と戦略的育成分野に約8割を集中し、方針とベクトルを合わせて研究開発に取り組む。重点成長のエレクトロニクスでは、化合物半導体など旭化成の強みの技術を生かした研究に力を入れ、光電融合などもターゲットとしながら次世代事業を生み出していく。
領域を横断するテーマとしては、コア技術である膜技術をベースにした正浸透(FO)膜と膜蒸留(MD)とを組み合わせた濃縮システムを、ペプチド医薬や核酸医薬などの中分子医薬品の製造工程用途で開発している。このようなシナジー領域を研究・開発本部が先導する。
また、3領域の連携も積極化する。今年度から、各領域のR&Dのリーダー層が集結し、シナジーの創出を探索する議論を始めた。ここから“旭化成らしい”テーマを選定し、研究開発からコングロマリットプレミアムを生み出していく。
無形資産を活用し共創型の新規事業を創出する組織、TBC(テクノロジーバリュー・ビジネス・クリエーション)は、乳牛の乳房炎原因菌を迅速に検出する技術をエア・ブラウンに、超イオン伝導性電解液技術を独企業のEASにライセンス供与するなど続々と実績を上げ始めている。25年4月には、深紫外線レーザーダイオード(UV-CLD)などの事業化を目指すULTEC(名古屋市)を非連結のスタートアップ企業としてスピンアウトすることもできた。
これらの例のように、R&Dの出口を自社での事業化のみならず、ライセンス、共創、スピンアウトなど多様な展開とすることによって、研究開発の価値を最大化する。