<祢津茂義 常務執行役員 研究開発部長>
信越化学工業の研究開発には、100年の歴史を経て現在展開している事業の強化を図る「現業研究」と、将来の新事業を目指す「新規研究」の両面がある。新規研究では半導体関連材料、高速通信、ヘルスケア、持続可能な開発目標(SDGs)とカーボンニュートラル(CN)に貢献できる素材・材料を重点分野としている。
とりわけ人工知能(AI)関連の製品開発に注力している。当社は、シリコンウエハーやレジスト、ブランクス、光通信用ファイバー原料、ハードディスク用磁性材料など、データセンターやAIの発展に欠かせない材料を提供するAI関連企業と自負しているためだ。
単独研究はもちろん、大学など外部研究機関や顧客との連携も積極的に進めている。科学技術振興機構(JST)が公募した「次世代エッジAI半導体研究開発事業」において、採択された東北大学が主導する「3D集積技術」に参画を決めたことがその一例だ。当社のレーザー装置技術を基盤とし、3Dヘテロ集積技術の革新につながる高速・高精度かつユニークな実装技術開発を広範囲に加速したい。
窒化ガリウム(GaN)基板では、高耐圧化が進展してきた。当社製300ミリメートル口径の「QST基板」を用いて外部機関が形成したデバイスで、800ボルトの耐圧を確認した。さらに、当社での種結晶の改善により、口径200ミリメートル以下では3000ボルト以上の耐圧も確認した。非常に大きな成果だ。2027年にGaN基板の量産化を目指す。
半導体製造の後工程とつながる光電融合の分野では、光アイソレーターで長年の開発を開花させられる市場環境が到来しそうだ。当社はこのほか、光ファイバー用プリフォーム、シリコーンベースの放熱材料(TIM)や接着剤、基板材料となるSOI、封止剤やプロセス内で使用される仮接着剤など有機部材、さらに結晶の貼り合わせ技術といった多様な開発を手掛けてきた。これらの知見や特性を掛け合わせて新たな価値を創出可能だ。技術の進展がめまぐるしい領域で、顧客からの要求へスピード対応が欠かせないなか、計算科学やAIも活用して新規研究を加速し、AI関連企業としての役割をさらに高めていきたい。