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  • タイ特集 PTTグローバルケミカル、“最適化”へ進む戦略的転換
  • 2025年7月28日
     PTTグローバルケミカルは、化学業界にとって前例のないほどの難局を乗り切るため、サプライチェーン、生産、収益性などあらゆる側面から事業を最適化する戦略的転換に取り組んでいる。これを持続的な成長へ向け不確実性を乗り越える道しるべとし、それを達成するためにポートフォリオ転換や競争力強化、高付加価値で低炭素な事業の加速といったキーとなる重要項目を設定。短期的と長期的な視点から対応策が講じられている。短期的な視点では、2025年に、売上高の増大とコスト削減を通じて55億バーツ(約250億円)の利益を生み出すことを目指している。

     <デジタル化で効率追求>

     原料コストが安価な国における大規模な生産能力拡大により一部製品の市場構造が変化し、競争が大幅に激化している。同社は、継続的なポートフォリオ管理戦略と事業見直しの一環として昨年、アクリロニトリル(AN)とメチルメタクリレート(MMA)を生産する合弁事業からの撤退を決定し、ウレタン原料事業の売却プロセスも開始した。徹底的な戦略見直しと実行可能な全ての選択肢を検討し、長期的な価値創造へ改めて焦点を合わせることを目的に、不採算部門からの責任ある撤退を決断した。

     これに加え、“全体最適化”のアプローチを通じた効率性の改善に取り組んでいる。統合されたサプライチェーン上のコスト、信頼性、品質といった多様なパラメーターのなかで効率性を重視し、デジタル技術も活用して最適化に取り組んでいる。これには一例として、先進的なデジタルプラットフォームや、生産設備のリアルタイムな改善や予知保全を可能にする人工知能(AI)の利用が含まれる。また、グループのシナジーによる取り組みとして、粗原料調達をPTTグループで連携して行い、原料、輸送、コストをそれぞれ削減し、最適な調達でサプライチェーンの効率化を促す「プロジェクト・ワン(P1)」のような施策も進めている。

     PTTグローバルケミカルはまた、非中核資産の最適化を目的にアセットライト戦略を推進しており、最大300億バーツ相当の価値を生み出すことを目標としている。

     これに続く重要項目として挙げるのが競争力の強化。PTTグローバルケミカルでは過去5年間にわたり、オレフィン生産のためのクラッカーなど上流部門の設備を改良する投資を実施してきた。5基のクラッカーによるオレフィン生産能力は合計で年間約380万トンに達する。原料選択に柔軟性を持たせた設計となっているこれらのクラッカーは、エタンやナフサのようなガスベースと液体ベース両方の原料を投入可能。市場環境や価格動向が異なる複数の原料を柔軟に使える生産体制を構築している。

     <エタンの使用比率向上>

     生産性強化のために、中長期的にナフサより費用対効果の高いエタンの使用比率を高めていく方針。同社にとってタイはエタンの主要供給地として重要な位置を占めている一方で、長期的な柔軟性を確保するため、原料供給源の多様化にも取り組んでいる。このほど、米国のエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズなどとエタンの長期購入契約を結んだ。29年から15年間にわたり、年間40万トンのエタンの供給を受けることになった。PTTグローバルケミカルでは年間に使用する石化原料の半数近くに当たる年250万トンのエタンを使用可能であることから、その枠を最大限活用して石化原料の持続可能性を確保する。

     <マプタプットをハブに>

     高付加価値製品と低炭素製品のビジネスにおいては、マーケットでの地位強化に取り組む。その中心的なプロジェクトとして、タイ東部ラヨン県マプタプットのグループ本拠地を、機能性化学品の東南アジアハブに機能転換する計画を進めている。マプタプットには機能性化学品の原料、技術革新、製品サービス、インフラ、工業用地という重要な要素が揃っており、PTTグローバルケミカルは政府機関との間でさまざまな課題を調整する機能も持っている。これらの要素を活用しながら、特殊化学品ポートフォリオのなかで多様なパートナーとともに事業を拡大する。

     その一環として東レと昨年、非可食バイオマス原料を利用したアジピン酸の量産技術の検討に関する覚書(MOU)を締結した。今後、東レと共同で実現可能性調査を行い、30年までにムコン酸とバイオアジピン酸の商業化を目指す。

    • 廃食用油を原料とするSAFの商業生産で“一番乗り”を果たした
      廃食用油を原料とするSAFの商業生産で“一番乗り”を果たした
     グループ内で特殊化学品分野の成長の牽引役を担うコーティング樹脂世界大手の独オルネクスもマプタプットで事業を拡大する計画を持っている。既存工場の生産能力を増強して東南アジアハブとし、機能性コーティング樹脂を含めて水性コーティングに焦点を当てる。拡張計画に向けて調査を行っており、今年中に最終投資決断を下す予定だ。

     また、オルネクスの事業拡大を通じて高付加価値ビジネスを成長させる。新たに拡張したオルネクスの中国ハブは、昨年の販売量が前年から15%増えるなど好調。次期増強計画を検討しており、30年までに全ての計画を完了させる方針だ。

     これに加え、インド西部マハラシュトラ州マハドで建設を開始した新工場の第1期計画は、今年第4四半期に商業運転を開始する予定。オルネクス全体では、生産能力の増強、生産の効率化、技術革新を進めていく。

    • バイオ分野は今後の注力領域の一つ。来年にはネイチャーワークスの工場が完成予定だ
      バイオ分野は今後の注力領域の一つ。来年にはネイチャーワークスの工場が完成予定だ
     <サステナビリティ重視>

     PTTグローバルケミカルでは、グループ企業のこうした取り組みと並行して、特殊品と汎用品の事業の間で戦略的なバランスを維持し、両分野において持続可能性と成長を両立させることに継続して取り組んでいく。

     こうした取り組みのほか、サステナビリティ分野を強化してビジネスのバランスを保つことも重要視する。バイオ分野とサーキュラーエコノミーに関連するビジネスの創出に注力するとともに、脱炭素化を進めていく。具体的な取り組みとして、タイで初となる廃食用油を原料とする商業規模のバイオリファイナリーが今年稼働を開始した。今後需要が増えることが予想される持続可能な航空燃料(SAF)をすでに製造販売している。

     これに加え、このバイオリファイナリーでは、硬質包装材、玩具、自動車部品などに使用される樹脂の原料となるバイオプロピレン、タイヤやスポーツシューズの製造に使われるバイオブタジエン、ポリエステル繊維やPETボトルの素材であるPET樹脂の原料となるバイオ高純度テレフタル酸といった高付加価値なバイオ化学品とバイオポリマーの生産を可能にする。

     同社はまた、バイオポリマー事業の世界大手であるネイチャーワークスを通じて、バイオプラスチック事業を展開している。同社は現在、第2の拠点となる完全統合型のポリ乳酸(PLA)工場をタイに建設中で、来年に完工する予定。これは、PTTグローバルケミカルが進める低炭素ソリューションの創出戦略を後押しするプロジェクトとなる。さらに、タイのバイオ分野と循環型経済の発展に貢献する取り組みであり、タイにとっては、持続可能な素材の供給ハブとしての役割を強化することにつながる。
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