日用品・化粧品市場では、個人の価値観に応じた「個別最適」を求める消費者が増えてきている
シンガポールの一般消費財市場は、所得水準の高さと成熟した消費志向を背景に、機能性・高付加価値志向が一段と強まっている。大手調査会社のIMARC Groupによると、化粧品・パーソナルケアを含むヘルス&ビューティ市場は2024年時点で13億米ドル規模に達し、33年までに年平均成長率(CAGR)4・3%で20億米ドル規模に拡大する見通しだ。成長の背景には、「安全・安心・自分らしさ」を重視する価値観が、消費者の間で広く定着していることがある。
なかでも顕著なのが、天然・オーガニック素材への志向の高まりだ。健康意識や環境配慮の浸透とともに、人工成分や化学物質を含まない製品に対する需要が高まっており、肌にやさしく、持続可能な製品設計が求められている。
詰め替えやリサイクル容器といった循環型の取り組みも浸透しつつあり、単なる「自然由来」ではなく、ライフスタイル全体に調和した製品が選ばれる傾向が強まっている。こうした市場変化は、香料・原料・処方といった川上側の製品開発にも確実に波及している。
また、パーソナライゼーションとカスタマイズへのニーズも顕在化している。性別や年齢といった基本的な属性だけでなく、肌質、生活環境、価値観に応じた「個別最適」を求める声が増えてきている。
AIやデータ分析を活用し、一人ひとりに合わせた提案や製品設計を進める企業も現れ始めており、こうしたアプローチは顧客とのエンゲージメントやブランドへの信頼形成にもつながっている。こうした市場トレンドに連動するかたちで、日系原料メーカーも提案型の価値提供に注力している。
高砂香料工業は、ナチュラル志向やウェルネスといったテーマに即した提案に力を入れている。近隣諸国に設けた開発・生産拠点を活用し、地域の感性や文化に即した製品づくりをスピーディーかつ柔軟に進めている。
日光ケミカルズは、ハラル・コーシャ対応といった認証ニーズへの対応を進めることで、周辺国を含む需要を取り込んでいる。食品用途に加え、包装材などの周辺分野からの引き合いが増えている。
川研ファインケミカルは、マスプレミアム~プレミアム層をターゲットとした処方提案型営業を強化。個々のブランドが抱える製品設計上の課題に入り込み、複数の製品を組み合わせた提案型ソリューションを強化している。
近年、化学品分野では中国をはじめとする新興国からの安価な原料が流入し、とくに汎用品を中心に価格競争が激化する局面が増えている。こうした環境下で、単なるコモディティ供給では差別化が難しくなる一方、課題解決型の高機能素材や用途展開をともなうソリューション提供は、顧客にとっても選ぶ理由となりうる。
シンガポールは質を重視する消費者層とトレンドを先取りする市場性を兼ね備えており、高付加価値型ビジネスを展開するうえでの戦略拠点となっている。