昨年1月、3万9945円でスタートした日経平均株価は、関税政策による米中摩擦で4月に3万円付近まで下げ、その後は一気に5万円まで駆け上がった。とりわけ上昇したのが米国ハイテク株の株高を受け、急伸したAI(人工知能)半導体関連株だ。半導体で唯一の成長市場であるAIデータセンター周りで、どれだけの材料を提供できるか。AI半導体市場に食い込めば食い込むほど、有望な半導体銘柄として市場で認知され、株価上昇にドライブがかかる。 (比較期間は25年1月6日~12月24日)
<IC基板のイビデンは3倍強に>
昨年は分かりやすいAI半導体銘柄が大きな伸びを示した。イビデンの株価は、4788円でスタートし、11月4日に年初来高値の1万5445円をつけ、3倍強に拡大した。同社はICパッケージ基板のグローバルトップメーカーで、とくに先端AIサーバー向けで世界シェア8~9割を有するとみられる。AIサーバー向けパッケージ基板は、使用量の増加に加え、ICチップ大型化や混載数増加によるサイズアップが予想される。今後さらなる拡大が見込まれ、10月には日経平均株価を構成する225銘柄に採用された。
<フジクラ、光ファイバーで差別化>
フジクラは7月に世界最高の超多心光ファイバーケーブルを発売
フジクラは6680円から始まり、11月4日にピークの2万1680円をつけた。こちらも3倍強の伸び率だ。背景にあるのはAIデータセンター需要による光ファイバー事業の拡大。時価総額は5兆円を大きく上回り、半導体関連の大型銘柄に成長した。
他の電線株も軒並み堅調だ。住友電気工業は2851円でスタートし、今期の最高値は7215円(12月10日)で約2・5倍を記録。古河電気工業は6866円から始まり、年初来高値が1万1695円(11月4日)で約1・7倍に伸長した。SWCCは7720円スタートで年初来高値は1万1460円(11月14日)をつけ、約1・5倍に拡大した。
<極薄銅箔の三井金属は4倍超え>
三井金属はキャリア付き極薄銅箔「MicroThin(マイクロシン)」で世界シェア95%以上を有する
4660円で始まった三井金属は、11月17日に約4・5倍の2万1230円をつけた。同社は電気メッキ原理を応用し銅を析出させた電解銅箔のグローバルサプライヤー。キャリア付き極薄銅箔で世界シェア95%以上を有する「MicroThin(マイクロシン)」は半導体パッケージ用途、世界シェア約8割とみられる高周波基板用電解銅箔「VSP」はAIサーバー関連で販売量が増加する。2製品とも日本、マレーシア、台湾で増強投資を実施するが、既存の銅箔設備の転用が可能なことから、市場では販売量の増加と事業の効率性が高く評価されているようだ。
昨年の3月19日に東京証券取引所プライム市場に新規上場したJX金属は約2・8倍の伸び率。公開価格の820円から初日終値は874円となり、ピークは10月7日で2339円をつけた。同社は世界シェア6割を有する半導体用スパッタリングターゲット材、同8割となるフレキシブルプリント基板(FPC)向け圧延銅箔に加え、CVD/ALD前駆体、ハードディスク向け磁性材用ターゲット、インジウムリン基板、チタン銅といった半導体、情報通信材料などを取り揃える。従来の銅資源・製錬から先端材料にシフトする姿勢が高評価につながっている。
<太陽HDや東京応化も2倍前後>
2・5倍に拡大したのが太陽ホールディングス。年初の2060円が12月19日にピークの5210円をつけた。同社はソルダーレジストの大手で営業利益の約9割を主力のエレキ事業が占める。収益性も高く、エレキ事業の営業利益率は約30%だ。昨年3月にはROE改善に向け、連結総還元性向100%を目安とした株主還元の実施を発表。6月の定時株主総会で当時の佐藤英志社長の取締役再任が否決されるなど、体制面で紆余曲折があったものの、業績自体は好調に推移する。同社は非公開化を検討しており、こうした思惑も株価上昇につながっている模様だ。
2倍近くの伸びを示したのは扶桑化学工業と東京応化工業。扶桑化学工業は年初3540円から右肩上がりが続き、12月10日に約1・9倍の6760円をつけた。同社はCMP(化学機械研磨)工程用の超高純度コロイダルシリカをグローバルに供給できる数少ないメーカー。半導体プロセスの複雑化でCMPスラリーの需要が高まっており、同社品も台湾、米国といった主要市場に加え、中国でも販売量が増加する。使用量の増加や用途の広がりによって中長期的な販売増が見込めることを市場は評価しているようだ。
東京応化は先端市場に注力し勝ち続ける姿勢を追求する(写真はフォトレジスト)
東京応化は3535円スタートで11月17日に年初来高値の6482円となり、約1・8倍を記録した。半導体用フォトレジストで約25%のシェアを握るトップメーカーで、EUV(極紫外線)など先端向けのレジストに加え、表面改質剤をはじめとする関連化学品も販売が好調だ。タイムリーな投資計画が評価されており、フォトレジストの中核拠点となる郡山工場(福島県郡山市)や韓国・仁川工場での体制強化は2026年度に終える予定。韓国・台湾での高純度化学薬品の増強も続ける。
超純水メーカーではオルガノの株価が伸びた。8290円の始値に対し、11月17日に約1・8倍の1万4795円をつけた。昨年10月に発表した中間決算は、順調にプラント案件を獲得し、高収益のソリューションビジネスも寄与して営業利益が前年同期比51・4%増の173億円となった。21年の始値は1540円であり、5年で株価は10倍、10年単位でみると20倍超に急成長した銘柄だ。
同業の栗田工業は24年7月の最高値7182円、野村マイクロ・サイエンスは24年4月の同6370円を追う展開。昨年は年初比で栗田工業が12月8日に約1・2倍の6803円、野村マイクロが11月4日に約1・7倍の4155円をつけた。
<レゾナック 改革奏功、一貫上昇>
レゾナックは企業文化の醸成の一環で、昨年11月に大規模学習イベント「ラーニングフェス」を開催した
昨年の日経平均株価は3万9945円スタートで年初来高値は約1・3倍の5万2636円だった。そのため1・5倍前後の企業は、日経平均以上に上昇した銘柄といえる。
レゾナック・ホールディングスは始値4045円に対し、年初来高値は12月24日の6668円。「真の企業価値最大化を図ることが経営者の使命」とする髙橋秀仁社長が、半導体材料を中心とする機能化学品事業への特化と不採算事業にスピーディーにメスを入れる改革を断行。株価の面でも企業価値の向上を有言実行してみせた。約1・6倍の拡大で4月以降はほぼ一貫して株価が上昇し、とりわけ先端パッケージング技術の開発に向け、国内外27社で組むコンソーシアム結成を発表した9月3日以降に大幅な伸びをみせた。
<封止材・研磨材・メッキも好調>
住友ベークライトは年初の3894円に対し、11月4日に約1・4倍となる5489円をつけた。同社は封止材のトップメーカーで、AI向けパワー半導体、エッジAI用などの拡大によって封止材の四半期出荷量は1Q、2Qと連続で過去最高を更新した。
大阪有機化学工業は2916円から始まり、ピークは12月22日の4075円で約1・4倍。24年12月~25年8月期決算は主力のフッ化アルゴン(ArF)レジスト用原料が拡大し、営業利益が前年同期比54・5%増の46億円となった。減価償却費は24年をピークに減少傾向で今後のさらなる拡大を見込む。
研磨材事業で約8割の営業利益を稼ぐ富士紡ホールディングス。始値5450円で、12月24日に約1・5倍の8220円まで上昇した。祖業の繊維から化学品、電子材料にシフトし、大胆な事業ポートフォリオ改革が評価された格好だ。研磨パッドのなかでもソフトパッドに強みを持つニッチトップ戦略で半導体市場で高い存在感を放つ。
デクセリアルズは始値2455円、ピークは11月17日の3333円で約1・4倍の伸びだ。5月に光半導体を手掛けるグループ会社の生産能力を増強する事業戦略を公表。次世代技術の光電融合銘柄として注目を集める。11月には自己株式取得を発表し、株価上昇に拍車がかかった。
感光材メーカーのダイトーケミックスは始値202円で年初来高値は9月22日の337円。約1・5倍の伸び率だ。近年の最高値はコロナ禍の半導体需要で記録した21年の518円で、ここが一つのターゲットとなる。同業の東洋合成工業も21年に最高値1万9270円を記録。昨年のピークは11月4日の7500円だった。フォトレジスト原料を手がける両社は足元で底固めを図り、再び上昇をうかがう。
メッキなどの表面処理薬品メーカーも、このあたりの水準だ。メックの25年の始値は3455円で11月13日に5600円(約1・6倍)まで上昇。上村工業は始値1万930円に対し、12月10日に1万5440円(約1・4倍)、JCUも始値3870円で12月11日に5530円(約1・4倍)をつけた。
3社の24年度の営業利益率はメックが26・7%、上村工業が22・5%、JCUが37・1%と高く、安定したビジネスモデルが強み。得意とする基板向けの表面処理薬品に加え、各社は再配線層(RDL)やインターポーザーといった「中工程」に積極的に進出し、先端パッケージの需要も取り込む考えだ。