• 大型特集
  • 新年特集号 新春トップ座談会 逆風跳ね除け飛躍と挑戦の年に
  • 2026年1月1日
    • 右から筑本、橋本、工藤、水戸、髙橋各氏(司会=渡邉康広取締役編集本部長兼編集局長)
      右から筑本、橋本、工藤、水戸、髙橋各氏(司会=渡邉康広取締役編集本部長兼編集局長)
     化学産業を取り巻く環境が大きく変化している。世界各地で続く紛争や分断はサプライチェーンを不安定化させ、地政学リスクは常態化した。中国をはじめとする新興国勢は汎用品のみならず、日本が得意とするスペシャリティケミカルでも存在感を示そうとしている。また、不可逆とみられた世界におけるグリーン化の潮流は一時後退の動きもある。先行きの不透明さが増すなか、日本の化学産業は世界で勝ち残るため、いま何をすべきなのか。業界を代表する5社のトップに展望を語ってもらった。

       <出席者>

    •  旭化成 工藤幸四郎社長
    •  住友化学 水戸信彰社長
    •  三井化学 橋本修社長
    •  三菱ケミカルグループ 筑本学社長
    •  レゾナック・ホールディングス 髙橋秀仁社長
    •  司会=化学工業日報社・渡邉康広取締役編集本部長兼編集局長

    工藤氏 マテリアルの構造明確化


    • 旭化成 工藤幸四郎社長
      旭化成 工藤幸四郎社長
     -近年、各社は事業ポートフォリオの最適化や収益構造の改善など、さまざまな構造改革に取り組んでいます。そうした改革を通じて得られた成果や、残る課題は何かをお聞かせください。

     工藤 2022年から始動した前中期経営計画で、初年度に過去に買収した会社の減損、地政学リスクの高まり、原燃料価格の高騰などといった逆風が吹いて、20年ぶりの純損失に陥った。順調に成長する計画を策定したが出鼻をくじかれた格好で、構造改革に取り組み始めた。

    石油化学事業では三菱ケミカル、三井化学と西日本連携の検討を進め、誘導品も構造改革を実行している。全社的に構造改革を本気で行うマインドセットへと変わり始めている。また、構造改革だけでなく。成長投資も両輪で推し進めており、そこは成果といえるだろう。当社は多角化経営をしているため、事業ポートフォリオの変革はある意味普遍的な取り組みと言えるが、改めてスタートラインに立つことができたと感じている。

     水戸 当社は23年度に大幅な赤字を計上し、創業以来の危機的な状況に陥った。こうした状況を踏まえ、全社を挙げての短期集中業績改善策と再成長を目指した聖域なき構造改革に取り組み、ベストパートナーへの事業売却などの対策で7千億円以上のキャッシュの創出と業績のV字回復を達成した。

     そうしたタイミングで昨年4月に私は社長に就任した。経営方針として、強みである有機合成化学の技術をベースとした「勝ち筋」に徹底的にフォーカスすることを掲げ、当面の成長ドライバーをアグロ&ライフとICT&モビリティに据えた。また、石化を中心とするエッセンシャル&グリーンマテリアルは環境負荷低減ソリューションによる価値創造に舵を切り、医薬は再生・細胞医療と、開発・製造受託(CDMO)で将来の成長を目指すという新たなスタートを切った。

     石化の構造改革は、国内の上流は丸善石油化学とナフサ分解炉の再編を決め、下流は三井化学、出光興産とのポリオレフィン事業の統合を決め、一定の成果を挙げられた。しかし、海外に目を向けるとシンガポール、それからサウジアラビアの拠点で積み残した課題があり、それらはスピード感を持って取り組んでいく。

     髙橋 旧昭和電工と旧日立化成の合併で統合のプロセスを進め、そのなかで15以上の事業を売却あるいはスピンオフをする大胆な事業ポートフォリオの改革をしてきた。統合当初から、半導体材料に注力する成長戦略を実行し、戦略適合性、収益性、ベストオーナーの3つの観点で、事業を整理してきた。

     来年、石油化学のパーシャル・スピンオフが完遂すれば、ある程度、事業ポートフォリオは戦略的に明確になり、半導体材料分野の専業に近いかたちで適切な評価を市場から受けられると考えている。

     石油化学については、独立を前提とし、分社化したクラサスケミカルが今後どうしていくのかを考えていく。

     橋本 21年に30年度をターゲットとする長期計画を発表し、成長領域と石化の戦略をそれぞれ進めてきた。成長領域は、コア営業利益が19年度から25年度で年平均成長率(CAGR)11%で伸びている。ただ、中身をみると、過去に実行した大型M&A(合併・買収)で期待通り成果が出てない案件などがあり、それらは構造改革を徹底して進めている。すなわち、成長領域においても資本効率の悪化につながる事業や関係会社はマイルストーン管理を行い、未達の場合はベストオーナー視点での入れ替えも辞さない覚悟で進めている。また、成長領域はグローバル・スペシャリティ・カンパニーを掲げており、中国勢が技術的、規模的にキャッチアップしてきているなかで、どう強化していくかが課題だ。

     一方、石化は、東西のナフサ分解炉で他社連携が進展している。今年は西日本連携の方向性も出せるだろう。ポリオレフィンは水戸さんからお話があった通りで、誘導品も再編を含めた手を打ってきている

     当社は27年度に石化を最低でも完全子会社化し、さらなる再編を進めていくが、できれば一気に行いたい。石化は国内の製造業を支えるエッセンシャル産業としての立ち位置を築く会社にする。それらを具現化することで、長計で目指す完成形に近づけると考えている。

     筑本 スペシャリティマテリアルズは想定以上に伸び、高機能フィルムや半導体関連などが力強く成長している。また、炭素繊維・コンポジットは、川上の炭素繊維の生産能力が大きくバランスの悪い事業構造だったが、川上の能力適正化と川下の成形品の拡大といった改革により収益性が改善している。

     一方、収益が悪化している事業の売却や事業所の閉鎖なども断行してきた。それらの構造改革は最終局面を迎えている。残る課題は、市況影響が大きいメチルメタクリレート(MMA)と石化と炭素だ。方向性は見えており、あるべき姿に速やかに進めていく。

     ただ、基礎化学品は日本の社会基盤そのものであり、経済安全保障にも直結する。長期的に各社が連携していくことになるだろう。時間軸の長い議論にはなるが、石化を競争力ある事業体にし、かつ日本の脱炭素を実効的に進めるためには、東西に年産能力150万トン規模の最新鋭のエチレンプラントを1基ずつ設けて集約する、といったことも戦略的に考えていかなければならないのではないか。

    水戸氏 勝ち筋に徹底フォーカス


    • 住友化学 水戸信彰社長
      住友化学 水戸信彰社長
     -日本の石化産業は、国内市場の成熟や中国の大増産を背景に、事業再編を模索しています。目指す産業の将来像や、それに向けた再編や戦略の方向性をどのように描いていますか。

     筑本 国内のナフサ分解炉の生産能力は現状600万トン強で、ポリマーの輸出分などを除くと、エチレンの純内需はおそらく300万トン台だろう。そうすると、先ほどお話しした、150万トン規模のエチレンプラントを東西に1基ずつという考え方もできる。

     グリーンで持続可能な素材で川下産業を支えるためには、競争力のあるプラントに新規プロセスや原燃料転換を集中して導入する方が、再編を進めやすいのではないかと考え始めている。

     橋本 東西に1基となるかはわからないが、石化企業は、石油精製や製鉄業界の再編と同様に、2~3社に集約されていくのだろう。ただ、その時に強い事業体でなければならない。水際競争力がない状態で残っても意味がない。したがって、単に適正化していくだけではなく、GX(グリーントランスフォーメーション)の新技術の他、新しい技術も入れ込んで競争力もつけていく。現況が35年頃まで続くとも言われており、30年までにある程度(再編の)決着を付けなければ、日本の石化の競争力は極めて厳しい状況になるとみている。

     髙橋 石化は社会インフラの側面が強い。したがって、既存の株主と対峙しながら説明する事業ではないと考えている。インフラ事業だとすると、国の支援もより一層強固なものが必要ではないか。

     水戸 石化の市況は、過去はシクリカル(循環的)でおおよそ4~5年の周期で好不況を繰り返してきた。しかし、現在の悪化は、先ほど橋本さんもお話しされたように、35年ぐらいまで続くと言われ、かつて経験してきたサイクルとは全く別次元の悪化を迎えているのだろう。そのなかで、石化産業を国内のエッセンシャル産業として残すためには、やはり業界全体としての再編は待ったなしと言える。

     もう一つの課題となるGXの取り組みでは、コスト競争力の壁を技術で乗り越える必要があるが、そのハードルは非常に高い。当社も複数の技術開発に取り組んでいるが、どれが本命になるかわからない。そのなかで、個社の経営資源も限られるため、そこでも他社との連携が欠かせないと感じる。現状の苦しい状況の打破と、将来のGXに向けての両方で連携が必要になるのではないか。

     工藤 川上のナフサ分解炉については皆さんのご意見に異論はなく、必然の流れとして統合が進むのだろう。一方で、いかに強い誘導品を保有するかが重要になる。株価の観点から見ると資産回転率の低さが一つの課題としてあげられる。過剰な資産を減らしつつ、誘導品の強化や分解炉の統合でウィン-ウィン の関係を構築できるか。それによって、日本の石化企業が強くなり、初めてナフサ分解炉が安定するという考え方が必要と捉えている。

     例えば、当社のエンジニアリングプラスチックでは、現状利益をあげているが、「30年代も収益性を挙げることができるか」となるとクエスチョンマークがいくつかつくのは事実。それを強い事業体にするために、持っている資産を有効活用し、連携も駆使してさらに競争力を高める。そして川上を引っ張っていくということだ。従来の、川上の採算が悪くても川下で儲かれば良い、全体最適を図る、というのも当然あるが、それを重視しすぎると道を誤るかもしれない。川下をどう強くしていくかという視点が重要だろう。

     -世界的に脱炭素・グリーン化の流れが進む一方で、一部では動きが後退する兆候も見られます。そうしたなかで日本の化学産業はどのように対応すべきでしょうか。

     橋本 研究開発は進めているが、先ほどからご指摘が出ているように、社会システムが整わなければ、GXに資する技術への大規模投資はできない。現状、日本は他国・地域に比べ国の支援を受けて進めているものの、本格的な普及には社会の認識を含め機運が一気に高まる必要がある。中長期的には二酸化炭素(CO2)削減や環境負荷低減の潮流は変わらないため準備は進めるが、商業化には社会システム・制度の整備が不可欠だ。

     髙橋 その通りで、研究開発のブレイクスルーがあった時、それらを誰が、どのように実装するのか。社会システムが整っていなければいけない。それとは別に、米国などカーボンニュートラル対応の姿勢が変わるなかで、日本だけが真剣にやり続けるのかという問題もあるだろう。不確定要素が多いため、走りながら考えるしかないのだろう。

     工藤 リスクをどう軽減しながら進めるかが重要だ。当社も補助金などを活用しながらCAPEX(資本的支出)をともなう技術開発に取り組んでおり、リスクの最小化を徹底的に検討している。例えば、川崎製造所(川崎市)で水素製造用の水電解装置向け膜の製造設備を新設するが、この設備はイオン交換膜法食塩電解プロセス用の製品も製造可能で、当面はイオン交換膜法製品を生産する。つまり、投資の中でいかにリスクを軽減できるかを個社で工夫するしかない。

     水戸 繰り返しになるが、本命の技術が定まらないなかで、個社の経営資源は限られ、技術開発でも連携する必要がある、というのが一つ。それから、皆さんご指摘の通り、社会システム、行政側のサポートも必要だろう。当社が開発している廃プラのケミカルリサイクル(CR)を社会実装するためには大量の廃プラを集めるシステムが不可欠となる。現状、廃プラが自治体単位で回収されているが、日本全体で回収できるようなシステムの構築を行政に考えてもらう必要はある。

     筑本 GXの実装はコストが大きな課題だ。先日、グリーン製品の消費税を免除してはどうかという意見を聞いた。例えば、消費税が20%の国・地域であれば、消費者にとってグリーン製品は20%安くなることになる。国をあげてCO2の削減を目指すのであれば、非常に良い方法だと感じた。現状、日本でもCAPEXで支援していただいているが、OPEX(運営コスト)のサポートはない。その点をどう考えるかは重要だろう。

     工藤 グリーン製品に消費税を免除するという考えは興味深い。最終的に、都心だけでなく地方も含めてコンセンサスを得ることができれば、実現可能かもしれない。

    橋本氏 成長領域でも再編が必要


    • 三井化学 橋本修社長
      三井化学 橋本修社長
     -近年、スペシャリティケミカル分野で中国をはじめ海外企業の台頭が著しく、国際競争は一層激化しています。日本企業としてどのような競争優位を維持・強化し、差別化を図るべきでしょうか。

     水戸 第1に、中国勢の追い上げが非常に脅威だという話題が必ず挙がる。それは事実だが、一方で中国をパートナーとして考え、協業する視点もあると考えている。例えば自動車メーカーも、電気自動車(EV)は中国が最大市場となり、日系メーカーも電池などは中国メーカー品を採用している。中国の強みと日本企業の強みをうまく組み合わせて展開していくことは、有効な手段の一つだろう。

     ただ、競合しているのもまた事実だ。一歩先を行く製品は必ず追いつかれる。目指すべきは、圧倒的な優位性の確立だ。また、製品だけでなく、品質保証といったサービスを一体となって提供できる事業は強い。そこは十分に競争優位性を確立して対応できる。

     筑本 昨年、中国を訪問した際、太陽光パネルや風力発電所の数に驚いた。グリーン化が進み、コスト競争力にも優れる。そのエネルギーをベースに化学品を製造し輸出されたら、日本はグリーン化ですら劣勢に追いやられてしまう。規模の優位性を発揮しコスト競争力を追求する中国勢に対して、ニッチな分野に特化する戦略もあるが、それだけでは面白みに欠ける。

     顧客のイノベーションを促進する製品や、真に役立つソリューションを手がけ、顧客が急成長すれば当社も急成長する―それが理想だ。意外とそうした視点や発想が中国勢には乏しく、差異化のポイントと感じる。

     髙橋 当社は利益の約8割が半導体材料で、とくに半導体後工程材料で、主要な15のうち10程度をラインアップに揃えている。一つひとつは市場規模が小さく、製造が複雑で手間のかかる領域には海外勢は参入しにくい。そのため、当社は比較的居心地の良さを感じている。

     橋本 中国は化学産業の発展に国を挙げて取り組んでいる。支援も厚いため廉価品が市場に出回る。ルールが異なることを前提に、どう勝ち切るかが問われている。また、永遠のライバルではなく、協業の可能性もある。しかし、なかには資金、人的資源、技術がなければ協業はしないと明言している企業もある。同じ目線で、こちらも競争力をつけておかなければ、ウィンーウィンの関係は築けない。

     巨大な経営資源を持ち研究開発に取り組む中国勢にスピード勝負でどう勝つかがポイントになる。製品や技術はもちろんダントツで、複数の組み合わせなどで差別化ができるかはもちろん大事だが、本質的な競争力強化に向け知恵を絞らなければいけない。その時に、(石化だけでなく)成長領域においても再編し、中国勢に対峙するだけの経営基盤をつくる必要があるだろう。

     工藤 マクロ的な考え、日本全体としてどう考えるかに関しては、皆さんのおっしゃる通り。ミクロの話をすると、当社はヘルスケア、マテリアル、住宅の3領域経営で、これを継続させるためには専業メーカーと異なる難しさがあり、そこをどうマネジメントするか。差別化としてニッチな領域を攻める可能性もある。

     また、当社の歴史を振り返ると、強みを持つ技術や、自信のある事業に経営資源を集中的に投じる覚悟が欠かせない。そうでないと、専業メーカーと競争していくときに投資競争に負けてしまう。さらに、無形資産をどう使うか、それをうまくビジネスに活用できれば勝ち筋につなげることができる。

     筑本 皆さんは、勝てる事業、強い製品はどのようなものとお考えですか。

     工藤 モノを中心にサービスが付与できるような事業は強いと感じる。当社でいうと、多様な製品があるなかで、例えばイオン交換膜は、膜や電極などを販売し、その後、4年、8年、16年と交換需要がある。さらに電解用モニタリング装置などを手がけるカナダ企業を買収し、ワンストップでソリューションを提供する事業を展開している。

     筑本 いわゆる製品販売後もサービスで稼ぐ「リカーリング」ビジネスですね。

     工藤 そのイメージ。もう一つあげると、自動車内装材で、18年に買収した米セージは合成皮革を手がけ、OEMと直接交渉して何がニーズかを把握している。製品とサービスをつなげられる、顧客のニーズがしっかりとらえられる、それができる事業は強いと感じる。

     橋本 ワンストップで、複数の技術と製品を組み合わせる、さらに、サービスをはじめ無形資産の価値が付くと強い。参入障壁も高まる。さらにアナログ要素が加われば、容易に追随できない。

     水戸 やはりサービスと組み合わせた事業は強い。当社の事業では、医薬品原薬の開発・製造受託(CDMO)は、他事業で見られるような、アプリケーションの提案やサプライチェーンのサポートのようなサービスとは少し異なり、登録や品質保証といったサービスが非常に強い。顧客は、品質トラブルだけは起こしてほしくない、確実に品質が信頼できる企業に委託する。したがって、製品だけでなく、品質や製品の登録を取得するサービスの提供との組み合わせが強いのではないか。

     髙橋 強い製品は大事だが、居心地が良いかという点も大事だ。例えば業界全体が儲かっていないと厳しい。半導体はみんな利益を挙げていて、だから居心地が良い。その居心地の良い市場で、製品のレシピを秘匿し、デファクトスタンダード化することが、生き残る道であり、強い製品の条件だと考えている。

    筑本氏 成長路線へ新たな強化策


    • 三菱ケミカルグループ 筑本学社長
      三菱ケミカルグループ 筑本学社長
     -中国をはじめとする巨大市場は成長の機会である一方、規制や競争環境、地政学リスクなど複雑な課題も抱えています。こうした市場に対して、どのような戦略で事業を展開していくのか、海外市場との向き合い方についてのお考えは。

      髙橋 中国では可能な限り地産地消で展開する方針で、半導体材料は現地工場で生産している。一方、米国、韓国、日本、台湾、東南アジアを一つのブロックとしてサプライチェーンを構築してきたが、台湾リスクは考慮が必要だ。米国も従来の延長線上でよいのか、再検討が求められている。

     水戸 中国を論じる場合、さまざまな視点があるが、リスク面としては、中国メーカーの台頭が挙げられる。また、原料調達面では、農薬の原料・中間体を中国に大きく依存しており、欧米の農薬メーカーも8~9割を中国から調達している。このため、完全なデカップリングは現実的ではなく、中国との協業は不可避だ。ただし、リスク低減のため、当社はインドの製造拠点拡充を進めている。

    市場面では、インドが注目される。半導体は現状後工程のみだが、前工程も26~27年に立ち上がるとされ、非常に魅力的だ。

     橋本 地産地消が原則となる。真のグローバル経営を目指すため、米国は米国、欧州は欧州と、地域統括会社を中心に開発から販売をセットにしたローカライゼーションを進める。一定の資源投下権限も現地に移譲し、各地域と事業本部が連携してスピードを速める。その一環として、開発部隊をグローバル化し、顧客に密着した技術サービスで現地完結型体制へ移行する。

     地域別ではアフリカなどのホワイトスペースにも注目している。ビジネス創出が見込める地域があり、パートナー探索やマーケティング拠点設置などの準備を進めている。

     工藤 地域別でみると、米国は3領域で事業を展開し、M&Aなども仕掛けているので、割合が高まるだろう。買収した会社も旭化成グループのカルチャーを理解しながら、どうシナジーを発揮するかを考え、ビジネスを進めており、成長が見込める。

     中国市場は当社売上高の約8%にとどまる。現地で生産したものを確実に販売する戦略で、その割合は現状維持か、やや低下する可能性がある。欧州は事業規模こそ大きくないが、環境関連など情報収集の拠点として重要な役割を果たしている。

     筑本 地産地消で、例えば、中国ではそこで稼いだ資金をさらに投資する方針だ。開発も現地で顧客に即応するため、ラボの人員を増やすなど強化している。米国も経営のローカル化が進み、現地で実質的な意思決定を行っている。今後はインドでの事業創出にも期待しており、半導体関連をはじめ成長が見込まれる分野で商機を積極的に狙っていきたい。

    髙橋氏 半導体専業へ変革手応え


    • レゾナック・ホールディングス 髙橋秀仁社長
      レゾナック・ホールディングス 髙橋秀仁社長
     -最後に、26年の事業展望や中期的な成長戦略をお聞かせください。

     筑本 干支の丙午にふさわしい挑戦と飛躍の年にしたい。これまで実行してきた構造改革や各種施策は明確に効果が出ており、残る課題も含めて徹底してやり切る。そのうえで、今年は成長に向けて新たな強化策を積極的に実現したい。伸びている産業は引き続き伸びており、収益性の高い分野に集中して勝負していく。

     工藤 石化再編の具体化は30年頃になるが、方向性は今年中にかなり明確になるだろう。われわれもより具体的に説明できる機会を増やしていきたい。3カ年の現中期経営計画の中間年であり、この期間はヘルスケアが成長の牽引役として順調に伸びている。次期中計もすでに検討しており、28年からの3年間でマテリアルが収益に貢献する計画だ。そのためにも、マテリアル事業の構造を明確化する。26年はその準備を進める重要な年になる。

     橋本 工藤さんのお話の通り、石化は今年、画期的な転換点を迎え、さまざまな方向性が示される。当社は27年度に分社化を予定しており、それは単なる分社ではなく再編まで一気に進めたい。成長領域では、これまで仕込んできた投資案件が予定通り立ち上がれば、大きな成長が期待できる。安全・安定操業の対策も連動させ、確実に取り組んでいく。

     水戸 構造改革という課題を引き続き推進する。一方、25年度に始動した新中期計画のスローガンは、現状からの飛躍を意味する「Leap Beyond」。26年はアグロ&ライフ、ICT&モビリティの成長ドライバーをさらに伸ばす。次世代事業として位置づける再生・細胞医療では、iPS細胞を用いた初のパーキンソン病治療薬が今年度中に承認を取得する見通し、エッセンシャル関連では廃プラのケミカルリサイクルに期待している。次回の座談会では、こうした事業を中心に夢を語れるようにしたい。

     髙橋 26年は半導体業界が好調な年になると、ほぼ全員が見ている。とくにAI関連の需要が旺盛で、当社は3つの主力素材を保有している。安定供給により需要に確実に応えていきたい。

     -長時間ありがとうございました。(敬称略)
いいね
電子版無料トライアル

  • ランキング(特集)