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  • タイ特集 自動車低迷、部材に痛手
  • 2025年7月28日
    • ピックアップトラックの低迷がサプライチェーンに大打撃となっている
      ピックアップトラックの低迷がサプライチェーンに大打撃となっている
     タイの基幹産業である自動車分野の低迷が続き、在タイの日系部品・素材メーカーもそのあおりを受けている。国内向け、輸出向けともに自動車生産は伸び悩み、サプライチェーンでは関連する合成樹脂や化学品の受注が減少。米トランプ政権からタイは高関税を突きつけられており、今後の間接的な影響も危惧される。国内の自動車販売の本格的な回復が待たれるなか、手探りの状況が続く。

     タイの今年1~6月の自動車生産台数は前年同期比4・8%減の72万4715台。5、6月は持ち直し前年比プラスとなったものの、累計では輸出向けの乗用車とピックアップトラックなどの国内向け商用車がいぜん前年を大幅に割り込む状態が続いている。タイ工業連盟(FTI)は7月、自動車生産の年間見通しを当初の発表から5万台減らし、前年割れとなる145万台に下方修正した。

     なかでも、タイの“国民車”とも例えられるピックアップトラックの販売不振が自動車サプライチェーンに与える影響は深刻だ。日系自動車メーカーなどがタイで生産している乗用車にはグローバルモデルが多く、海外で生産されたりモジュール化されたりした部品が多用されている。FTIのスポット・スクピサーン自動車部品部会長によると、こうした車種1台当たりに使われるタイ国産部品は30%以下。これに対し、タイが主力市場であり部品サプライチェーンが集中しているピックアップトラックでは、国産部品の比率が90%以上に達するという。生産台数が国内の部材メーカーの受注量にダイレクトに響いてしまうというわけだ。

     最も一般的な車種である1トンピックアップトラックの年間生産台数は、新型コロナの影響から回復基調にあった2023年と昨年を比べるとおよそ2割減少。今年1~6月は昨年からさらに2%落ち込んでおり、状況は悪化している。日系ピックアップトラック向けを中心に部材を提供しているメーカーのなかには、年間で2ケタ水準の受注減を余儀なくされている企業も珍しくない。

     自動車市場の先行きは見通せない状況だ。販売不振の最大の要因と目されている自動車ローンの審査厳格化は、その背景にある家計債務増加の問題が解決されておらず、貸し手側も慎重にならざるを得ない。タイ政府によるさらなる改善策が待たれるところだ。

     これに加え、米政権が打ち出した相互関税が新たな不安材料として持ち上がっている。トランプ大統領が7月7日に発表したタイに対する関税率は36%。これがそのまま実行されれば、東南アジアでものづくりのライバル国であるマレーシア(25%)、ベトナム(20%)、インドネシア(19%)、フィリピン(同)に比べ分が悪い。完成車の対米輸出は少ないものの、部品供給は一定量あるため、高関税を避けたい在タイの部品メーカーが関税率の低い国へ製造移管する可能性が出てくる。化学関連のメーカーや商社は、自動車部品の材料となる合成樹脂や化学品への間接的な影響を注視している。

     一方で、国内の自動車部品生産能力が今後余剰となる可能性があることから、タイ政府はその生産能力と技術力を他の産業に振り向けたい意向だ。転用先としては、医療機器や航空宇宙、鉄道インフラ、農機などが挙がる。FTIのウィワット副会長は7月に開かれた経済イベントで「政府はより明確な方向性を定め、何を重視するか明確にすべきだ」と話した。
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