原子レベルシミュレータ「Matlantis」の海外展開を狙う
三菱商事は半導体産業におけるビジネスモデルを本格的に検討し始めた。素材事業を担うマテリアルソリューショングループには半導体事業室を置き、半導体チップおよび人工知能(AI)の力を使ったソリューションの事業化を急ぐ。2024年6月に、AI開発スタートアップのプリファード・ネットワークス(東京都千代田区)とENEOSの合弁企業で、原子レベルシミュレータ「Matlantis(マトランティス)」を手がけるMatlantis(同、旧社名PFCC)との資本業務提携を発表したことはその第一歩と言える。
マトランティスは材料特性の原子レベルでの現象解明やコンピューターを利用した新素材開発が可能なクラウドサービス。AI技術、計算インフラと化学の知見を組み合わせて深層学習モデルに組み込むことで新規材料探索のスピードが大幅に向上する。日本国内を中心に、100以上の企業・団体が使用。1社当たりのアカウント数が増え、総アカウントが1000以上に上るなど、化学企業の研究開発担当者にはかなりの知名度を誇る。
三菱商事の販売網や知見を活用し、海外市場におけるマトランティスのマーケティングと拡販を担う。欧米の化学メーカー、デバイスメーカー向けを中心に販売地域を広げ、国内外の化学・素材産業の開発力強化に寄与し、日本発AIソリューション事業の海外における成功の後押しを目指す。
AI技術の急激な進展と経済安全保障の観点から各地域で半導体製造能力の強化が進むなか、半導体事業室ではサプライチェーンの強靱化に貢献しうる総合商社らしい事業構想を検討している。
AI・半導体領域における取り組みを全社横断で推進する「AIソリューションタスクフォース」が4月から始動しており、AIバリューチェーン全体を俯瞰しながら、今後の業界課題の解決につながるソリューションの提供を目指す。