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  • シンガポール特集 ジョホール・シンガポール特別経済区、プロジェクト年100件めざす
  • 2025年11月17日
    • 10月に開催された共同投資フォーラムの様子
      10月に開催された共同投資フォーラムの様子
     シンガポールとマレーシアが共同で推進するジョホール・シンガポール特別経済区(JS-SEZ)。地理的近接性と経済的補完性を生かし、製造業から物流、農業、再生可能エネルギーまで多様な分野で事業展開が進む。10月に開催された共同投資フォーラムでは、シンガポール企業によるジョホールへの投資額が累計55億シンガポールドルを超えたことが報告された。

     JS-SEZは、ジョホール海峡を挟んで国境を接するマレーシア南部のイスカンダル開発地域やペンゲランなどを対象に、人と物の移動を円滑化し、投資を促進する経済連携モデル。2024年1月には両国政府が覚書(MOU)を締結、年間100件のプロジェクト立ち上げを目指している。

     対象分野は製造業、物流、食料安全保障、観光、エネルギー、デジタル経済、グリーン経済、金融サービス、教育、健康など多岐にわたる。通関の自動化やペーパーレス化、QRコードによる入国手続きの導入など越境移動の円滑化も進められている。

     企業の動きは活発だ。シンガポールにアジア太平洋本社と先進製造拠点を構える米医療機器メーカーのレスメドは、ジョホールで部品製造と物流機能の構築を想定している。ジョホールで生産された部品をシンガポールで組み立て、世界市場へと輸出する戦略だ。

     再生可能エネルギー分野では、シンガポールに本社を置くアルパイン・リニューアブルズ・アンド・エディブル・オイルズがジョホールに多機能型精製施設を建設中。最大700トン/日の廃油を処理する前処理プラントや、バイオディーゼル精製設備を備え、持続可能な航空・海運燃料の供給拠点として27年の稼働を予定している。

     農業・食品分野では、シンガポールのアグリテック企業アーキセンがジョホールに大規模農業拠点を設置。スマート農業技術を活用し、地域の食料供給力強化と農業イノベーションを推進している。7月にはジョホール州政府系企業であるファームバイトと連携して屋内垂直農場も稼働させた。年300トン以上の葉物野菜の生産を見込む。また、シンガポールの食品原材料メーカーであるオラム・フード・イングリディエンツも27年にジョホールでの乳製品の新工場稼働を予定している。

     物流では、スイス系キューネ・アンド・ナーゲルがシンガポールとジョホールにまたがる統合物流ネットワークを構築。シンガポールでは医薬品や半導体など高付加価値貨物を扱う拠点を展開し、ジョホールではコスト効率の高い倉庫機能を担う。両地域を「ツインハブ」として活用することで、企業の供給網の柔軟かつ効率的な運用体制を整えている。精密機器の輸送に強みを持つシンガポールのシン・チュー・ウッドパックもジョホールに倉庫施設を新設した。

     2月には企業の越境展開を支援するため、マレーシア側にジョホール投資促進センター(IMFC-J)を設置。複数の許認可申請を一括で処理する「ワンストップ窓口」として機能し、承認プロセスを短縮するなど、事業環境の改善が進む。

     両国政府は今後も、規制の簡素化、人材育成、インフラ整備を通じてJS-SEZの競争力を高め、企業の成長と地域経済の活性化を後押しする方針だ。
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