3Mの本社。23年に始動した研究開発改革では、開発プロセスの可視化と高速化を目指した
3Mが新製品創出力の回復を加速している。事業再編などで一時的に開発活動は停滞したが、同社は研究開発プロセスの基盤を見直す取り組みを進め、再び活力を取り戻しつつある。年間約125件まで減少していた新製品投入数は2024年に169件へ増加し25年は当初計画の215件を上回る250件を見込む。
ジョン・バノベッツ CTO
巻き返しを支えているのが、23年に始動した研究開発改革「イノベーションエンジン再点火計画」。重点市場への集中、R&Dリソースの再配置、開発プロセスの可視化と高速化を図る「R&Dファクトリー」を柱とする。
重点市場に半導体、航空宇宙、自動車、エレクトロニクス、データセンターなどを選択。いずれも世界的な中長期成長が確実視されるうえ熱マネジメント、微粒子分散プロセス、接着剤、高機能複合材、精密なコーティングとウェブ加工、不織布など3Mの材料技術が競争力を左右する領域だ。
総研究開発費を大幅に増やすことなく、成長市場や迅速な事業化の機会により多くのリソースを投入することで、研究開発投資の効率と効果を高めることに注力している。プロセス改革とリソース再配置により、限られた投資で成果を最大化する。
R&Dファクトリーは、企画から材料設計、スケールアップ、市場投入までの一連の流れを可視化し、滞留箇所や意思決定の遅れを特定して改善につなげる新しい運営モデルだ。AI活用も拡大し、市場インテリジェンスや特許調査などの業務が大幅に短縮され、研究者が付加価値の高い業務に集中できる環境を整えた。
3Mが長年強みとしてきた研究文化は不変。49の基盤技術を全社で共有する「テクノロジープラットフォーム」、技術者ネットワーク「テックフォーラム」、勤務時間の15%を自主研究に充てる「15%カルチャー」など独自の制度は維持する。「自由と協業の文化は、3Mのイノベーションの基盤であり続ける」(ジョン・バノベッツCTO)。
「日本はアジア全体を支える重要なR&Dハブであり、顧客に近い場所で迅速に開発を進められる」(同)と日本の重要性は高まっている。自動車、半導体、電子・ロボティクスなど日本発の技術の強みを取り込み、グローバルでの成長につなげる。