ロサンゼルスのラッシュアワー。EV普及には充電場所の整備や充電時間、寒冷地における電池性能の低下など課題も残る
<波乱含みの25年 生産にブレーキ>
北米の自動車市場は、先の見通しにくい状況となっている。2025年は年初から波乱含みだった。各自動車メーカーは第二次トランプ政権の発足とともに関税の発動に備える形で駆け込み生産を実施。その反動として4月以降は在庫のだぶつきにより生産調整が入った。その後も貿易摩擦を背景とする中国の半導体不足やメーカーの事故によるアルミニウム不足などのサプライチェーンの問題も発生し、新車生産にブレーキがかかった。
このことから、25年度のカナダ、メキシコを含む北米市場の新車生産台数は当初1540万台と予測されていたが、足元では1500万台を割るとみる向きが増えている。自動車メーカーは政権の製造業回帰の音頭への呼応、関税回避の観点などから米国への生産シフトを検討していると言われるが、その答えが出るのは26年から27年以降になるとみられる。このため26年度の新車生産台数も回復が見込めず、1500万台を割るとの予測も出始めている。
電気自動車(EV)の状況も芳しくない。現政権はEVに対して「買うのは構わないが、サポートはしないという態度」(日系企業)で、実際に今年9月末には税額控除が終了。充電場所の整備や充電時間、寒冷地における電池性能の低下など課題も残るなか、今後の展開に不透明感が漂い始めている。
<足元はHV好調 新事業創出急ぐ>
一方で日系自動車メーカーをはじめとするハイブリッド車(HV)は好調。インフレのなかで燃費の良さが歓迎されているが、ある日系サプライヤーは「24年に複数の米系OEMの工場が大規模な労使交渉の影響で1カ月近く停止した。その期間に日系OEMのHVが伸び、現在の好調につながった」と分析する。
EVの足踏みはエンジン周りの部材などに立脚したビジネスをしている企業にとっては一息つけるかもしれないが、中長期では仕事は減っていくとの危機感はいまだ根強い。こうした現地のメーカーや商社の多くにとって、新規事業の創出が喫緊の課題となっている。一方でHVの伸長でバッテリー関連材料の需要は増えていくとみられる。
サステナビリティー関連では、各OEMの間で樹脂部品にポストコンシューマー樹脂(PCR)を配合するニーズが増加。ただ、一気に転換が進むというわけではなく、「安全性の優先度が低い部品から徐々に広がっていくことになりそう」(日系材料メーカー)。
製造業の回帰を謳う現政権だが、それを支える労働者の確保も難しい問題となっている。自動車メーカーに限らないが、人材確保のために初任給を引き上げる必要に迫られている企業は多い。現政権の移民に対する厳しい態度と、人手不足の問題にどう折り合いをつけていくのかも注目される。