<東友之 取締役常務執行役員 研究開発統括管掌>
三菱ガス化学は「真の研究開発型企業」を目指すにあたり、「マーケットアウト」のマインドを全社に浸透させている。顧客自身が言語化できていない潜在的課題をいかにすくい上げるかがその要点だ。さまざまなデジタル技術の活用が可能ないまだからこそ、競合より早く顧客の課題を察知して開発のスタートを切ることが肝要と思う。
研究統括部を中心とするコーポレートのR&D部門は、新技術創成の起点で責任を負う組織だ。研究員にはマーケットアウトの発想に基づき、顧客が抱える課題を自分事として捉えるよう、デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用などによりR&D現場の効率化を進め、直接の客先訪問に時間を割くよう促している。ここでは市場へのアプローチを変更する場合もあり、一例として香料原料で消費財メーカーへの直接提案を実現した。従来の延長で得られていた成果を起点に、マーケットアウト型の価値提案へと展開し成功につなげた事例の一つだが、自社の持つ化学品や誘導体の用途探索といったシーズアウト型の思考ではイノベーションにはつながらない。
前中計で構築された組織体制やシステムは今後も十分通用するものとして、環境変化などを踏まえ、運用面の細部を適時修正しつつ活用していく。私はこの変革を進化させながら、研究員が新たなアイデアを安心して発信・実行できるように心理的安全性を担保していきたい。R&D業務では革新性が強く、既存技術の延長線上にない非連続的で不確実な研究テーマが多いので、研究員のアイデアを潰さない風土づくりが重要となる。
研究統括部内の組織改革も行い、探索から事業化まで一気通貫で行う体制とした。新事業であっても、技術の起点で差別化ができていないと最初から他社との競争になってしまう。そうならないためにも、新規テーマは研究統括部である程度の利益が出せる段階まで育てる必要があると考える。
また事業部門の研究テーマに対してはあまり口を出さないようにしているが、潜在的な課題を捉えているかのチェックとともに、既存技術の延長線上にない非連続性のある取り組みに対しては、研究統括からも支援を行っている。