デジタル化が世界的に進展するなか、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の存在感が高まっている。GPU(画像処理装置)開発を手がけてきた同社が急成長を遂げた要因がAI(人工知能)需要だ。AI半導体で圧倒的なシェアを誇るエヌビディアは、直近でも事務処理の自動化が期待されるAIエージェント向けや、ロボット・モビリティなどフィジカルAI向けの最新AIモデルを発表し、事業拡大へ攻勢をかけている。米国本社副社長を兼務する大崎真孝日本法人代表に、事業の展望やAI戦略を聞いた。
▼…半導体市場への投資が活発化しています。
「半導体市場は凄まじく伸びるだろう。従来の技術での半導体はもちろん、今後AIが市場拡大に拍車をかける。AIは進化の過程にあり、コンピューティング能力がより必要になる。そのベースとなる半導体は世界中で膨大な量が求められる」
▼…日本におけるエヌビディアの役割をどう考えていますか。
「デベロッパーのエコシステムをつくり、支援することがエヌビディアの事業の戦略。グラフィックス、科学技術計算、AIなどの開発をGPUコンピューティングで支援する。そのためのビジネスのメンバーや技術面、R&D、マーケティングを担当するメンバーも揃っている」
▼…研究開発体制について。
「2年前に日本で国産のAI開発を後押しすると発表し、順調に進行中だ。とくに政府のR&Dプロジェクトのサポートを中心に、日本の市場に適した技術の研究開発と実装に取り組んでいる。エヌビディア日本法人側でも人員を採用し、政府のさまざまな学術系、産業系のR&D案件を共同で進めている。プロジェクトの規模が拡大しており、適切なタイミングで体制を拡充したい」
▼…日本市場における事業の現状と展望は。
「エヌビディアのすべての事業を日本でも行っている。ゲーム、ワークステーション、スーパーコンピューター、自動運転をはじめとするAI。AI以外の、エヌビディアの従来のビジネスも成長が続き非常に堅調だが、一番の起爆剤はAIだ。AIでは学習用のデータセンターのGPUが最も伸びている。AI向けのデータセンターでは大きなコンピューティング基盤が必要になり、世界的にもその需要が旺盛だ。そして、エッジコンピューティングの需要は今の学習のフェーズよりもさらに活況を呈するだろう」
次世代GPU「NVIDIA Blackwell Ultra」
▼…競合の存在について。
「エヌビディアとしては、あまり競合を意識していない。私達は独自の世界をつくり上げている。ハードウエア、ソフトウエアともに開発することでデベロッパーを支援している会社は当社だけで、相対する企業はほぼ見当たらない。私達はスピード感をもって次なる成長へ挑戦し、顧客、パートナー、デベロッパーを導いていく。決して他社とのベンチマークなどはしない」
▼…AI半導体では新興勢も台頭してきました。
「多くの競合他社が現れるのは市場の成長につながる素晴らしいこと。AI半導体の可能性を考えれば皆取り組みたいはずで、現在の状況は当然だとも思う。そのなかでエヌビディアの特徴は、ソフトウエアも絡めて市場をサポートするプラットフォームを有し続けることだ。AIコンピューティングでユニバーサルなプラットフォームを作り、それを自動車、ロボット、医療、グラフィックス、スパコンにも使う形にしている。特化型では特定の世界しか見えない。市場規模も小さいため大規模投資ができず、性能向上も難しくなる。より汎用的な特化型のコンピューティングこそがエヌビディアのソリューションといえる」
▼…日本の産業界のAI活用をどうみていますか。
「従来の日本の開発スタイルは、各工程を順序立てて進めるウォーターフォール型がメインだったが、それではAIの活用はうまくいかない。AIは無限の可能性があり、アイデアが必要。中途半端な理解で協力会社に頼み形になったとしても、そこからアイデアは生まれてこない。自社内にケイパビリティを持つことでアイデアを生み、商品に変えていくサイクルをつくることが重要だ」
▼…AI需要の見通しは。
「需要に応えるべく取り組みを続けても需要の天井が見えない。今はまだ助走期間の段階ともいえる。AIの需要は間違いなく今後も続き、私達としてはどのように産業を支援していくかを考えていく」
(聞き手=黒川公美子、阿桑健太郎、佐藤大希)
<略歴>
〔おおさき・まさたか〕大学卒業後、1991年に日本テキサス・インスツルメンツに入社。米国本社勤務を含め20年以上、DSP、アナログ、DLP製品など幅広い製品に携わりながら、さまざまなマネジメント職に従事。2014年、エヌビディアに入社。日本代表として、パソコン用ゲームのグラフィックス、インダストリアルデザインや科学技術計算用ワークステーション、そしてスーパーコンピューターなど、エヌビディア製品やソリューションの市場およびエコシステムの拡大を牽引し、日本におけるAIコンピューティングの普及に注力している。首都大学東京で経営学修士号(MBA)を取得している。