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  • インド特集 自動車サプライチェーン“進化の時”
  • 2025年3月31日
    • デリー近郊にあるマルチ・スズキ本社。ティア1にも現地開発の強化を呼びかける
      デリー近郊にあるマルチ・スズキ本社。ティア1にも現地開発の強化を呼びかける
     インドの基幹産業の一つである自動車産業は、中国、米国に次ぐ世界3位の市場規模を誇る。国民の所得向上などを背景に、今後も販売増加が見込まれる。自動車メーカー各社は生産拡大計画を打ち出し、部品や素材のサプライヤーは需要増大に期待をかける。成長市場である半面、競争は激しさを増している。韓国勢や地場ブランドが力をつけ、市場を牽引してきたスズキのシェアは低下。同社は開発のスピードアップやコストダウンのために、現地調達を強化し、ティア1企業へは開発の現地化を依頼するなど、サプライチェーンは進化の時を迎えている。

     インド自動車工業会のまとめによると、2024年の新車販売台数(乗用車と商用車の合計)は522万台。増加率は3%と鈍化したものの、乗用車だけで400万台を超える一大市場だ。

     伸びしろも大きい。地場の調査会社PRICEによると、04年度に全体の14%だった中間所得層(年収50万~600万ルピー、約90万~530万円)は、足元では31%まで拡大。建国100周年を迎える47年には60%へと増加すると予測している。スズキの四輪子会社マルチ・スズキ・インディアの製品ラインアップの中で手頃な車種の価格は40万~50万ルピーであり、中間所得層に入ることは新車に手が届く生活水準になったことを意味する。

     インド国内を走る自動車数は4000万台。1000人当たりの自動車普及率は3%程度で、7割の米国、6割の日本、ドイツ、英国などに遠く及ばない。中間所得層の増大が自動車の普及率を飛躍的に伸ばす可能性があり、30年の乗用車販売台数は「うまくいけば最大600万台ぐらいになる」(マルチ・スズキ担当者)というのがスズキの見立てだ。

     ただ、増える需要を狙うのはスズキだけではない。シェア2位の韓国・現代自動車は、現地子会社ヒュンダイ・インディアを上場させた。地場のタタ・モーターズやマヒンドラ&マヒンドラはEVを含め車種を拡充してきている。

     こうしたなかでマルチ・スズキは、部品の現地調達化をさらに進め、競争力の向上を狙っている。同社によると、ティア1から仕入れる部品の現地調達率は取引額ベースで95%。一方で、ティア1企業が自社製品に使用する輸入部品まで考慮すると、現調率は80%程度まで下がる。

     マルチ・スズキでは、社内の研究開発部門がこうした輸入部品の代替に取り組んでいる。車種開発は基本的に日本で行われるため、細かな部品には現調化の余地があるためだ。現調化できる部品を車種開発後に後追いで洗い出して対応する現在の方法では迅速さに欠けるため、新車種の開発段階から、どの部品から現調化するか前もって意向を本社と共有することにしている。

     同様の試みを、サプライチェーンで相対するティア1にも広げたい考えだ。新車種に変わるタイミングで少しでも多くの部品を生産開始時から現調化できるよう、開発段階で現調部品を使うよう働きかけている。

     ティア1企業にはさらに、開発の現地化も依頼している。インド市場では定番のコンパクトカーだけでなくSUV(多目的スポーツ車)が売れ筋車種の上位に入るなど、ユーザーの好みやトレンドが徐々に変化し、市場からくみ取ったニーズへの対応や開発の迅速性が従来以上に求められている。マルチ・スズキでは現調化や開発活動で競合をリードするため、ティア1へ向け、車両適合や各種評価作業、同国特有のニーズへの対応といった開発活動をインド国内で行うよう呼びかけている。

     日系ティア1では、インドでエアバッグや内外装部品を手がける豊田合成がこの呼びかけにいち早く呼応した。23年11月に豊田合成テクニカルセンターインディア(ハリヤナ州マネサール)を移転・拡張し、エアバッグを実際に膨らませる展開試験機を導入するなど評価設備を揃えた。これまで工場や日本で行ってきた試作用の縫製も同センター内でできる。顧客立ち会いの下で試作品を評価し、問題があればその場で縫製し直して再評価可能だ。

     豊田合成ウノミンダインディアの林幹根社長は「これからかなりの数の車種が立ち上がっていくなかで、(評価のために)毎回日本に持って行って結果を持ち帰ってとなると間に合わないので、現地でR&Dを強化すると決めた」と話す。スタッフ数も順次増やしており、28年末には現在の2倍程度とする予定。

     スズキの呼びかけは、業界内の日系企業に波及しているようだ。林社長は「現地でのR&Dをどうすべきか検討していて、当社を訪問させてほしいと依頼してくる日系企業は多い」と明かす。日系サプライチェーンにおける開発機能の現地化の動きは、今後も続きそうだ。

     インドでの開発活動は欧米勢が先行している。独ボッシュはバンガロールに研究開発センターを持ち、22年にはハイデラバードにソフトウエアの技術センターを開設した。独コンチネンタルも研究開発拠点を有している。
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