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  • 半導体材料特集 東京エレクトロン・早川崇ゼネラルマネージャー、技術進化へ強靭なSC構築
  • 2025年8月25日
      急進する半導体プロセスの高度化に向けて製造装置メーカーの存在感が高まっている。東京エレクトロン・コーポレートイノベーション本部でコア技術開発を担当する早川崇ゼネラルマネージャー(GM)は、次世代装置開発やパートナーとの連携を通じてイノベーションの創出に取り組む。数多くの製品群でトップクラスの世界シェアを有する同社ならではの視点で半導体産業の現状および将来像を聞いた。

    ▼…キャリアについて。

     「1991年に半導体業界に入り、開発でキャリアを重ねながら技術マーケティングや現在の製品プロデュースや開発マネージメントと仕事の領域を広げてきた。半導体産業は、この30年間、継続的に成長してきたとみている。中国に加え、インドといった新市場も生まれており、今後もさらに産業全体が拡大していくだろう」

    ▼…この30年間で半導体産業の構造が大きく変わりました。

     「半導体産業の中心が米国や日本から台湾や韓国へと動いていく過程で、回路設計からウエハー表面に回路を形成する前工程、回路(チップ)を切り離しパッケージングする後工程を各企業で分担する水平分業型のビジネスモデルが主流となってきた。ビジネスのフレキシビリティの観点から合理的な流れだったという印象をもっている。また、米中関係などの地政学的リスクを配慮し、各国政府の規制の枠組みのなかでビジネスを展開していくことが求められている。中国では半導体の内製化が進展していることは間違いないが、今後どの程度進展するかを注視している」

    ▼…今後の市場をどのように見通していますか。

     「半導体の世界市場については、2030年までに1兆ドル規模になるというのが業界のコンセンサスで、現在の約6400億ドルから約2倍になっていく。伸長するAI(人工知能)サーバー向けの好調が継続するとともに、PCやスマートフォンにもAI半導体の搭載比率の上昇により半導体の使用量が増加するだろう。製造装置は製品化まで時間が必要なため、AIの進化から量子コンピューターなど技術トレンドをしっかり見ていく必要がある」

    ▼…国内の半導体産業についてはどのように見ていますか。

     「各国、地域で半導体産業を盛り上げようとしている流れはポジティブに受け止めている。日本では、半導体関連市場への再参入に取り組む企業も見られるが、デバイスやプロセスが直面している技術的課題を見極めて、対応していくことが重要だ」

    ▼…微細化進展の限界点やパッケージでの高機能化が議論されています。

     「半導体の性能向上を回路の微細化により実現する『ムーアの法則』には、技術進化により単位トランジスタ当たりのコストが下がるという経済合理性も求められる。現時点で計画されている1ナノメートルプロセスあたりまでは経済合理性が担保できると考えているが、その先はまだ見えていない。そのため、微細化だけでなくパッケージング技術を用いてそれぞれの各チップの特徴を活用するアプローチも注目されているが、チップレットのさらなる普及には歩留まり向上が課題とみている」

    • 拡散炉や洗浄、成膜、エッチングと各種装置で高いシェアを有する(写真はエッチング装置)
      拡散炉や洗浄、成膜、エッチングと各種装置で高いシェアを有する(写真はエッチング装置)
    ▼…技術進化に向けた材料・素材メーカーの役割は。

     「半導体製造装置のキーパーツ、キーコンポーネントは日本製が多く、コロナ禍での経験を生かし国内外での強靭なサプライチェーンの構築を進めている。高度化するプロセス開発で開発材料には先行的に触れさせてもらうことから、これからも顧客課題の解決に向けた協力関係を続けていきたい。中国などの新興の材料メーカーの台頭も認識しており、性能の良い材料があれば採用する可能性はあるが、簡単に変更できるものではないだろう」

    ▼…環境問題も新たな課題になっています。

     「当社では、持続的なサプライチェーン構築に向けたイニシアティブ『E-COMPASS』を立ち上げている。顧客や協業企業と連携し、サプライチェーン全体で半導体の技術革新と環境負荷低減に取り組んでおり、リユースやリサイクルは業界全体での取り組みが必要になっている。注目されている『PFAS』についても、当社製品関連でもノンPFASに代替できるのは現時点で限られている。そのため、当社の技術でいえば、複数プロセスを代替できるレーザー剥離技術が良い例だが、工程簡略化や生産効率向上を実現するプロセスの革新で環境性を高めていくことが理想ではないか」

    ▼…若い人にメッセージを。

     「半導体産業は今後も成長するなか、過去に使われなくなった技術が再び注目されるケースなどが見られる。当社が属する半導体製造装置産業は電気、機械、物理、化学など多様な技術分野の知識を統合する必要があり、さまざまなチャレンジができる魅力的な分野になってきたと考えている」

    (聞き手=阿桑健太郎、黒川公美子)

    〔はやかわ・たかし〕米系半導体デバイスメーカーにて装置エンジニア、プロセスエンジニア業務を経て、1998年に東京エレクトロンに入社。入社後は、半導体製造装置の開発、プロセス開発に従事。その後、開発・マーケティングメンバーとしてエッチング装置、枚葉成膜装置などの製品企画、また自社複数製品に跨るモジュール開発を牽引してきた。
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