エクソンモービルは今春、広東省で年産160万トンのエチレン設備を稼働。中国では今後も基礎化学品の増産が続く
中国政府は7月、石油化学や鉄鋼を含む10産業の過剰能力削減に乗り出す方針を発表した。中国では化学品を含めあらゆる工業製品が供給過剰となり、し烈な価格競争が企業収益を圧迫。例えば今年1~6月期、国内自動車販売台数は1500万台を超えたが、黒字を確保した中国OEM13社の総利益を合計しても、トヨタ1社に及ばない。
激しい競争で業界全体が疲弊することを指す「内巻(ネイジュエン)」は元来、中国の受験戦争を象徴する言葉だったそうだ。製造業における「内巻」は国内景気を停滞させるだけでなく、余剰製品の「デフレ輸出」を通じて国際課題ともなっている。
遠景科技(エンビジョン)は今年7月、内モンゴルでグリーンアンモニアの本格生産を開始した
改革開放政策で1990年代前半に加速が始まり、コロナ下でも勢いが衰えなかった設備投資の沈静化には相応の時間が必要で、年率5%前後の経済成長目標との両立も容易ではない。今上期、製造業投資は前年同期比7・5%増といぜん高い伸びを示した。化学産業に目を向ければ基礎化学品、ファインケミカルいずれも生産能力自体は今後も増加が続く。
しかし10産業に限らず、今回打ち出された過剰能力削減の方針は強いシグナルとなる。一朝一夕ではならないとしても、エネルギー消費や環境負荷が大きく、生産性が低いプラントは淘汰が進む。化学業界では、老朽設備の安全性に関する新たな検査制度も導入される。あらゆる投資プロジェクトで、省エネ性や製品の付加価値が今まで以上に問われるようになる。
ポリプラスチックスとGPACの合弁会社は、南通でPOMプラントを移転、完成させた
今上期に打ち出された政策は、来年スタートする第15次5カ年計画でも基本方針として盛り込まれる可能性が高い「新質生産力」「緑色発展」と通底する。エンボディドAI(人型ロボット)やバイオ製造、量子技術、先端半導体などより「高質」な製造業の発展にともない、化学品・素材市場は新たな広がりをみせるだろう。一方、今後5年で中国はグリーン水素やバイオマスを原料とするメタノール、アンモニアの最大生産地となることが確実視される。
次期5カ年計画下で、産業界のもう一つの柱になるとみられるのが、企業の海外進出だ。例えば中国の自動車OEMは、通商摩擦回避もありかつての日系OEMのようにグローバル展開を加速している。これにともない、日系化学企業は中国でのスペックイン活動を強化。現地テクニカルサービスの充実という古くて新しいテーマにも取り組んでいる。
中国はソフトパワーの強化も図る(世界的に人気の中国発キャラクター「ラブブ」)
日本企業は過去30年、巨大市場・中国が存在するメリットを享受してきた。今後はグローバルに成長する中国企業といかに向き合うかが問われる。