台湾の技術開発を牽引する工業技術研究院(ITRI)。日本の材料メーカーとの共同開発の経験も豊富な李宗銘エグゼクティブ・バイス・プレジデントにITRIの現状やイノベーション創出に秘訣について聞いた。
<“市場動向型”で>
▼…ITRIの現状について。
「現在、ITRIは、6つの研究所に6500人以上の研究者が在籍しているが、海外の研究機関と比較して大きな規模とはいえないのが現状だ。そのため、常に協業を意識して先行的な研究開発に取り組んでいる。例えば、バイオメディカルのプロジェクトでは、バイオメディカル研究所が中心になりITRI内の機械や材料といった各部門を加えたチームで進めている」
「また、プロジェクトが市場動向型としているのも特徴だ。市場ニーズからバックキャストして研究開発を始めるケースが多い。各研究所の強みを生かすことで、サプライチェーンの発展に貢献していきたい」
▼…市場重視ということですが、民間企業の研究開発との関係は。
「民間企業をサポートし、研究開発のスピード化を実現したいと考えている。台湾では先端半導体企業は注目されているが、ITRIは先端半導体の応用について、ロボティクスやモビリティの開発や検証に共同で取り組める機能を整備している。また今後、データセンターなどで必要になるパワー半導体に関する研究開発などは民間企業がいち早く市場投入できるように共同で取り組んでいる」
<日本企業に期待>
▼…日本企業との共同開発について。
「日本企業が保有する優れた技術の応用について、コラボレーションしていきたい。日本の研究機関は基礎研究を重視している印象だ。それゆえ、ITRIとの補完性が大きいと考えている。私自身も、日本の滞在時にスマートフォン用のガラス部材について、日本企業との共同案件を進めた経験があるが、これからのITRIの技術を提供していきたい」
▼…今後の技術開発について。
「私は1987年にITRIに入社し約40年間働いているが、入所時の院長はTSMC(台湾積体電路製造)の創設者であるモリス・チャン氏だった。彼の理念はイノベーションがベースにあるので、今後の各産業が追求するイノベーションを活動の軸としていくと考えている」
<基礎技術が重要>
▼…イノベーションを生み出し続ける秘訣は。
「イノベーションの定義は難しいが、これまでの経験から応用を起点に研究開発を進めることがアプローチしやすいのではないか。基礎技術を理解してスピーディーに製品化していく方が市場にも受け入れられやすいと考えている」(聞き手=阿桑健太郎)